小説(マンガ化希望)

第43話 苦戦続く

通常の打撃は相手の体表から破壊する。衝撃は皮膚、皮下組織を経て骨や内臓へ届く。これを外部破壊(アウターブレイク)という。これに対し、相手に触れて氣を送り、内部構造を直接破壊する攻撃もある。これを内部破壊(インナーブレイク)という。内部破壊は特殊な訓練が必要だ。“氣”という独特なエネルギーの概念に精通する必要がある。多くの医師が西洋医学で医学体系を学ぶが、氣は東洋医学にのみ存在する概念である。

睨み合う2人。相手がインナーブレイクの使い手であると分かった以上迂闊に近づけない。インナーブレイクの使い手が相手だと一瞬触れられただけででも痛打になる。しかも今の状態では互いに動きが鈍っている。

雨がいつの間にかやんでいた。厚かった雲も薄く広がり太陽の存在を認識できるようになってきた。昼間の決闘だったが、だいぶ日が傾いたことに2人は気づく。

藤依は日没前に帰途につきたかった。今身をおいているのは敵陣だ。何の準備もなく、敵陣で夜を迎えるのはリスクが高い。それに、やまじとしかおがどうなったのかも気になる。しかし、現状は異倫にまだ分がある。手関節以遠が使えない異倫と上肢全体が動かない藤依ではハンデの重さが違う。この状態で強敵相手にどこまで戦えるか。

しかし、2人の部下を置いて上がってきた以上、藤依は引くわけにはいかなかった。

藤依は果敢に打って出た。距離を詰め、連続の回転蹴りを放つ。異倫は後退しながら蹴りを躱す。左上肢が使いないため蹴りにいつものキレがない。それでも常人であれば一瞬でのされている速さなのだが。

異倫は上肢の一部が使えないが、藤依は上肢全体が動かない。異倫は手関節の伸展ができなくとも、打撃をいなしたり、拳を打ち下ろしたりすることは可能だ。接近して拳の打ち合いでは手数が合わない。藤依が蹴り主体の攻撃に転じたのは合理的な判断であった。当然、異倫もそのことに気づいている。

「蹴り主体になるよな。当然。」

異倫の右脇腹めがけて藤依の左回し蹴りが飛んでくる。異倫は右膝を上げ、太ももの外側でそれを受けた。

「ドボっ。」鈍い音が響く。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。