小説(マンガ化希望)

第40話 内部破壊(インナーブレイク)

拡張された刹那の中で藤依は極めて冷静だった。0.1秒にも満たない世界で己の体を守るため、本能的に最適解をたたきだした。藤依は異倫へ打ち込むはずだった左拳を開き、相手の肘関節近位をつかんだ。相手の四本貫手の勢いを殺すように異倫の腕を下に押し下げ、なおかつ全身を後方沿って浮かせることでダメージを最小限に抑えた。

だが完全に勢いを殺せたわけではない。藤依の左腕に電撃を浴びたような激痛がはしる。まともにくらえば腕一本吹っ飛ぶ異倫の腋窩破断斬である。威力を殺したと言っても組織が受けたダメージは大きい。

右腕を使ってバク転をしながら藤依が距離を取る。左腕はじんじんとした痛みがあるが、感覚がおかしい。反対の腕で触れても厚い別の皮をかぶったようだ。触っているのがほとんどわからない。そして最も戸惑ったのが左腕に力が入らないことだ。

筋肉も切れているのだろうが感覚障害が説明つかない。骨も折れているわけではなさそうだ。

藤依は反対の手で左の手関節を触れた。

「橈骨動脈の拍動(パルス)を触知する。指先の色も悪くない。」

次に指先を圧迫すると爪がピンクから白に変わるが、圧迫をやめるとすぐにピンク色に戻る。

「末梢循環不全もなし。少なくとも主要な血管は断裂していないようだ。とすると障害されたのは・・・。」

「さすが藤依。自分の攻撃が間に合わないと判断し左手を攻撃から防御に切り替えてダメージを最小限化したな。見事だ。だが、お気付きの通りの私打撃はそこらの拳法家の打撃とは一味違う。」

「これは、内部破壊(インナーブレイク)。破壊したのは腕神経叢か。」

「御名答。」

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。