雑記(医療関連)

上手な受診の仕方(後編)

上手な受診の仕方(後編)

救急外来では患者さんは何か体のことで困って受診することが通常です。痛いとか、苦しいとか、めまいがするといった症状がそれです。救急外来では、「なんともないですが、検診でひっかかったので来ました。」という人はいません(来てはいけません)。

診察は、「今日はどうしましたか。」の一言で始まる問診からスタートします。だいたい聞かれることは決まっていますのでスムーズに答えられるようにしておきましょう。そうすれば双方のストレスが減りますし、診療のスピードも挙がります。スピードだけではありません、診断の正確性も高まります。正しい診断には正しい問診が必要だからです。

今日は私のカルテテンプレートをもとに、患者さんにどんなことを聞きたいのか説明します。これを読めば受診の際に、どういったことを話せばよいかがわかります。

   ①主訴

    なんとかして欲しい一番つらい症状です。「熱があって、頭が痛くて、手がしびれて、食欲もなくて、たちくらみがして、気持ち悪くて」とたくさん訴える人もいますが、主訴は原則1つです(せいぜい2つ)。病院受診した最大の理由、一番つらい症状を伝えましょう。せっかく病院に来たのだから全部見てもらおうとするのはいけません。転んでケガをして来たのに、「そうそう、先生、最近足がむくんじゃって気になっているの。あと、夫からいびきがひどくなったって言われたんだけど何かの病気かしら。インターネットで調べたらいろんな病気が出てきて心配になっちゃって。」という相談はしてはいけません。救急外来はあくまで“救急”外来です。

    • ②現病歴

    診断のため最も重要なところになります。今まさに病院受診に至ったそのストーリーを話してください。昔入院したとかではなく、今回のお話です。なぜ診断に最も重要なのか。それは現病歴を詳しく聞くと検査しなくても診断にたどり着けるからです。あとはそれを裏付けるために検査をするだけになります。例えば、「おじさんが祝いの席で久しぶりに日本酒を飲んだら寝入ってしまった。」と聞けば急性アルコール中毒と分かります。「間違って降圧薬を倍量(1錠のところ2錠)飲んでしまった高齢者が失神で運ばれた」と聞けば、薬剤性低血圧だろうと分かります。現病歴は時系列に沿っていつからどのような症状がどのように出てきたのかを伝えます。

    例1

    夜9時頃、寝ている時に急に背中が痛くなった。刺すような強い痛みであり、位置が移動しているように感じる。姿勢には関係なく持続的な痛みである。しばらく様子を見ていたが改善しないため夜10時救急要請を行った。

    例2

    (施設で)X日の朝に嘔吐してしまった。その夜から発熱を認めた。X+1日、発熱が継続し、痰が絡むようになった。X+1日酸素の値が低下した。呼びかけに反応が悪くなった。X+2日さらに呼びかけに反応が悪くなった。嘱託医に相談したところ救急搬送を指示された。

    • ③既往歴

    これまで言われたことのある病気です。かなり前の話だったり、軽い病気だったりすると省略する人がいますが、こちらで判断するので全部教えてください。できれば、いつ、どこで診断され、どのような治療をしたのかまで知りたいです。以下にカルテの記載例を書きます。

    <既往歴>

    高血圧(40台から、Aクリニック通院中)

    弁膜症(50歳の時、B病院で手術)

    両膝変形性膝関節症(66歳で手術、C病院、人工関節置換術)

    前立腺癌(B病院通院中、ホルモン療法)

    アレルギー:ペニシリンで皮疹がでた(18歳の時)

    人工関節置換術をしていれば金属が体内に入っていますので、磁気を用いるMRIは撮影ができない可能性があります。どうしても撮影したければ、埋め込んだものがMRI対応かどうか、手術をした病院へ問い合わせをする必要があります。アレルギーがある場合、食べ物だと皆さんよく覚えているのですが、薬剤となるとうろ覚えになってしまいます。ですが、非常に重要です。「抗生剤でアレルギー」と言われても非常に困ります。範囲が広すぎるし、なんだか分からないのでこれでは抗生剤が使用できません。降圧薬とか利尿薬も同様です。薬剤名を知りたいのでメモするなどして分かるようにしておいてください。

    • ④内服

    お薬手帳を持ってきてください。これが一番手っ取り早いです。お互いのためです。「これくらいの大きさの」とか「白い粒」のといった説明はやめてください。わからないです。以前、お薬手帳を持ってきておらず内服している薬がよくわからないという人がいました。けがだったが風邪だったか忘れましたが、薬を処方しようとしたら、「先生、飲み合わせとかは大丈夫なんですか。」と言ってきました。

    そんなに飲み合わせが心配ならお薬手帳を持ってきてください!

    • ⑤生活背景

    入院になるような人では念入りに聞きます。家族は誰がいるか、どんな仕事をしているか、介護は必要な人かなどです。入院は高齢者が多く、介護についてはもっと細かく聞きます。食事(ペースト食とか)、排泄(お尻がふけるか)、清潔(お風呂に入れるか)、更衣(着替えられるか)、移動(杖なのか、車椅子なのか、独歩なのか)についてです。あとは認知面ですね。日付や場所がきちんと言える人なのか、もう曖昧になってしまっているのか。

    医師が問診で聞きたいのはざっとこんなところです。あとはケースバイケースでこれに肉付けをしていきます。その都度質問に答えてくだされば大丈夫です。時間節約のため受付で問診票を書くこともあると思いますが、だいたい上記のことだと思います。

    長くなったのでまとめます。

    主訴:受診した最大の理由。なんとかして欲しい症状。

    現病歴:今回の発症までの経緯。いつ、どのような症状がどのように始まったのか。

    既往歴:これまで言われたことのある病気、ケガ、アレルギー。

    内服:お薬手帳出してください。

    生活:外来ではそんなに聞かないこともある。高齢者では細かい日常生活動作について。

    ABOUT ME
    qqbouzu
    地方で救急科医として働いています。