当院の研修医はよく働いてくれます。伝統なのだと思いますが、カルテ指導がしっかり行われており、それが受け継がれています。とにかく情報を取ってカルテを埋めるということが徹底されています。忙しい救命センターの救急外来でカルテをきちんと書くことは大変です。私もカルテはもちろん書きますが、情報収集を研修医がやってくれるので助かります。
さて、そんな研修医が熱心に患者さんに話しかけてくれます。カルテを書くことが重要な仕事なので、色々なことを聞こうとするのです。
ある日の救急外来での話。一過性意識障害で運ばれた高齢男性でした。高齢なので少し耳が遠く、返答に時間がかかったりします。
「高血圧以外に病気は言われたことがないですかー。」
「手術とか受けたことはないですかー。」
患者さんの耳元で大きな声で呼びかけます。
本来であれば、そのまま問診を続けてもらうのですが私はストップをかけました。そこが廊下だったからです。CT検査のためにストレッチャーで移動し、CT室の前で扉が開くのを待っていのです。廊下にはベンチがあり、他の患者もちらほらいました。
「ちょっと待って。ここは廊下だよ。」
研修医ははっとなって、バツの悪そうな顔をします。
言うまでもなく、なんの持病があるかなんて衆人環視の場で聞くことではありません。本当に時間がなく、超緊急の場合は私も廊下で患者から話を聞いたり、逆に検査や治療の説明をしたりすることはあります。しかしそれは例外でしょう。過去の病気や家族のことなどプライベートな内容を診察室の外で聞く場合はいったん周りに人がいないか確認します。他人がいる場合は、耳元でひっそりと問診します。
研修医に悪気がないのは分かります。なので私もそれ以上言いませんでした。きっと分かってくれたと思います。忙しい救急外来だと、CT検査の待ち時間でさえも惜しく、患者さんから情報を聞きたいと思います。時間がもったいないですし、患者さんへの声掛けは悪いことではありません。
例えば、痛み止めの点滴後に、「痛みは楽になりましたか。」とか、それくらいなら良いと私は思います。胸痛で運ばれた患者さんに対して、「まだ痛みは続きますか。強くなっていませんか。」くらいだったら、廊下で聞いても許容範囲かと思います。
使用した薬剤の効果判定や、症状のトレンドは重要な情報です。
問診は他の人に聞かれない場所でするのが原則ですが、救急外来ではとにかく時間がない場合があります。そのような状況でも、話す場所によって、問診の内容を調節できたらもっとよいドクターになると思います。
研修医の皆さん、頑張ってください。