異倫の突きが藤依の心臓めがけて飛んでくる。異倫は一撃必殺を狙っていた。藤依は視覚を奪われつつもその気配を察知して体を捻りつつ後方に移動しぎりぎりでかわした。
「前よりも早くなっていませんか。あと0.01秒反応が遅れていたら貴方の手刀に胸を貫かれていたでしょう。」藤依が声をかける。
「耄碌したな藤依。それでかわしたつもりか。」
つー、、、。藤依の胸部が横一線に切れている。創(*)は浅くないが静脈性の出血を認めた。
*俗に言う“キズ”は皮膚の連続性が絶たれた創(そう)と皮膚が連続している傷(しょう)に分かれる。例えばきりきずは切創という。やけどは熱傷という。2つのタイプのキズをあわせて創傷(創傷)という。
「!」
不意をつかれたとはいえ、確かに躱したはず。静脈性とはいえ、重力に従って皮膚をつたう出血である。通常であれば無意識にでも圧迫止血を始めるところだが、藤依は第二撃に備えていた。藤依は動揺していなかった。
「耄碌したのはあなたの方では。」
つー、、、。異倫の右肩が切れておりそこからから出血をしている。こちらも致命傷ではないが、藤依と同じくらいの出血のようだ。藤依は不意をつかれたあの一瞬、相手の攻撃を躱しながら反撃していた。
「ふっ、認めよう。さすが藤依先生。私も本気をだそう。」
「無理をなさらず。もうとっくに本気でしょう。」
「ふん。ウォーミングアップだ。」
2人は再度対峙した。上空ではゴロゴロと雷鳴が唸っている。冷雨に打たれる2人からはもうもうと湯気が上がっていた。