総論

研修医✕手技

CVを入れたり、気管挿管をしたり、胸腔穿刺をしたり、、、、、、実臨床では様々な手技があります。研修医はそれを一つ一つ習得していきます。病態を考えて点滴や内服をオーダーするのも医師の仕事の面白いところですが、実際に手を動かして行う手技もなかなか面白いです。

*面白いは愉快というわけではなく追究のしがい、やりがいがあるということ。念のため。

私は座って考えるより体を動かすほうが好きなタイプなので、手技が好きです。うまくいったら嬉しいですし、習得した手技ももっともっと早く、正確に、苦痛なく行いたいと思います。研修医にとっても手技は実際に“やった感”があり、一つ一つ成功させていくことで自信がつきます。

やる気のある研修医は、「やりたいです」、「やらせてください」と自分から言ってきます。

とはいっても、手技は侵襲性のある処置です。痛みを伴いますし、怖い合併症もあります。「やってみたいです」と言われてもおいそれとやらせてあげられません。

「患者はお前の練習台じゃねぇんだぞ」、これは研修医時代に上司から言われた言葉です。当時は、「そんなことを言われても」と思いましたが、蓋し当然でしょう。

誰でも初めてはあるので、そこは患者さん側のご理解も必要ですが、患者さんからの信用を失わないためにもしっかりと上司が監修してトラブルが無いようにする責任があると思います。私は私が見ている前で部下が手技でトラブルを起こした場合、私の責任だと思っています。そのため、「こいつにはやらせられない」と思えばやらせませんし、途中でも術者を交代します。

ここ最近、2回研修医から処置を取り上げました。

1つ目は、中心静脈カテーテルの挿入です。準備ができたら呼んでと言ったのですが、呼ばれていったら何もできていません。私の目の前で患者の体位を整えたり、エコーを設置したり、穿刺部位の確認をしたり、ベッド柵を外したりしています。その研修医は2年目です。

「おいおい、俺はこの段階から見ていないといけないのかよ」と思いました。

「準備ができたらっていうのは、もう消毒も終わって穿刺するところまでできたらという意味だ。俺は君が患者の体位を整えたり、エコーを設置したりするところから見ていないといけないのか。」と小言を言いたくなりましたがぐっとこらえました。

まぁ、後で言うとするか、と思い、しばらく様子をみていました。

が、準備が遅い遅い。えーっと、と考えながら色々やっています。そうこうしているうちに、30分が経過しました。まだ消毒までたどり着きません。

消毒が終わって水通しや局所麻酔の準備をしていますが、これも時間がかかります。ただ手の動きが遅いのではなく、何を準備してどの順番で使うのかが分かっていないようです。本番だというのに、今頭を整理して、手順を考えながらやっているようでした。手術でもなんでもそうですが、始まってから手順を整理する医者がいるでしょうか。それは前もってやっておくのです。

流石にストップを掛けました。

「君は2年目だろ、この手技も初めてではないな。俺が呼ばれてもう30分以上経つが、まだ術野の消毒にすらたどり着かない。準備が悪すぎるんじゃないか。きちんと予習はしてきたんだろうな。君の手の動きを見る限り、単に動きが遅いというわけではなく、手順が分かっていない。これじゃ任せられない。」

そう言って術者を交代しました。

2つ目は腹水穿刺です。

救急外来に肝硬変で多量の腹水が溜まった患者さんがいました。研修医は1年目と2年目がいましたが、2年目の研修医が腹水穿刺をやったことがあるとのことだったので、じゃあやってもらおうということで頼みました。

準備が終わった頃に様子を見に行くと、術者は1年目の研修医でした。どうやら2年目が、「やってみなよ」と術者を譲ったようです。

この時点で、むむっと思いましたが少し様子を見ることにしました。

2年目の指示でおおむね準備が終わりました。次に局所麻酔をシリンジで吸いますが、1年目の子はまだやったことがないらしく、局所麻酔の受け取り方がわかりません。

ここで、むむむっと思いました。見守っている私の不安が一気に強くなりました。

そして、いよいよ穿刺。

2年目が「もうちょい上、そうそこ。角度はもうちょっと下」などと指示を出しています。

はい、ここで取り上げました。

見ていて気が気ではありません。患者さんだってそうです。局所麻酔下で行うのですから意識があります。お腹を刺されるのに、術者はどう見ても初心者で、後ろから「もっと上」だの「角度がこう」だの言われているのです。たまったものじゃありません。

「ちょっと待って。ここは俺がやるわ。」

そう言って私は1年目からシリンジを取り上げました。

その後、説明しながら手技を見せます。手技が終わってから2人に注意しました。

「(1年目へ)君はまだ腹水穿刺をやる段階に至っていない。まだ挫創の縫合もろくにしたことが無いんじゃないか。腹水穿刺についても成書で学んでいないだろ。局所麻酔の吸い方から怪しかったけど。上級医がやっているのを見てやり方を学んでおくんだよ。あれじゃ怖くて任せられないよ。(2年目へ)下の子にやらせるのは早い。もっとレベルを考えてやらせて欲しい。後ろから君がささやいて手技をやらせているのがばればれだ。少しは患者の気持ちになってみろ。」

このケースは手技の準備ができていなかった1年目もいけないと思いましたが、1年目に手技を振った2年目にも問題を感じました。

はっきり言ってしまえば、「そもそもお前は下に手技を譲るほど習熟していないだろ。なにいっちょ前に指導側に回ってるんだ!」ということです。

その2年目は腹水穿刺をやったことがあるようですが、所詮は2年目。まだまだ貪欲に自己研鑽を積むべきなのです。患者さんは練習台ではないというのは大前提ですが、手技の機会は自身の成長の機会でもあります。それを、「やってみる?」なんて下の子に手技をやらせている場合じゃないのです。

手技は成功すると嬉しいものです。やりがいがあります。でも、患者さんは痛みやリスクを背負っています。そのことをわかってほしいです。最初手つきがおぼつかないのは理解できますが、道具の使い方や手順が分かっていないのは論外です。「自分がやった方が早いけど、経験のためにやらせよう」とはなりません。

あと、もっと貪欲に学んでほしいです。

「やってみようか」なんていうのはその手技を数え切れないほどやって、合併症のリカバリーも含めてできるようになってから言ってください。

手技の取り上げが2例続いて、そんなことを思いました。

ABOUT ME
qqbouzu
地方で救急科医として働いています。