小説(マンガ化希望)

第44話 立つか、反撃の狼煙

「脛腸靭帯受け!」

蹴りがクリーンヒットしたかのように見えたが異倫には全く効いていなかった。腸脛靭帯とは大腿四頭筋の外側に位置し、大腿筋膜張筋と大殿筋の付着部から脛骨近位前面の Gerdy 結節に停止する長大な筋膜様組織である。強固な靭帯組織で蹴りを受けた異倫はほぼノーダメージだ。

「キレが全く無いな。もはや避けるまでもない。」

藤依はその後も蹴り主体の攻撃を続けるが、すべて異倫に受けられてしまう。格闘では相手の攻撃が当たらないことが一番だ。構えを取ったとしても相手の攻撃を受ければ体に衝撃は加わる。では、攻撃をかわさず受ける理由は何か。

それは反撃への速さである。

相手の攻撃を避けると多くの場合重心が後ろへ動く。そうすると反撃まで時間がかかる。しかし多少のダメージを覚悟して受けた場合、重心は後ろに下がらず切り返しが早い。

「はいやっ。」

異倫は藤依の蹴りを大腿外側で受け、そのまま右足底で藤依の胸のどまんなかを蹴りつけた。

「うっ。」

たまらず藤依が後ろへ吹っ飛ぶ。地面に尻もちをつき、座った状態の藤依に異倫が歩み寄る。胸に強い衝撃を受けた藤依は呼吸が整わず動けなかった。まさに万事休す。

「ここまでだな。まったく、お前には手を焼いたよ。この状況でまだ闘志を保てている点は褒めてやろう。」

絶体絶命の藤依だったが目は死んでいなかった。いや、むしろ勝利という未来しか見ていなかった。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。