「下等人間?また不愉快な言葉を使いますね。その傲慢さが貴方をここまで貶めたのです。こんなごっこ遊びはおしまいにして村の人を解放しなさい。貴方がやっているのは悪の所業です。」
「私の前で悪だとか正義だとかを語るのか。」
「貴方は罪なき人々を苦しめています。それを悪と呼ばず何が悪でしょうか。」
「では罪があったら。罪人なら苦しめて良いのか。お前は臨床家だ。人を殺したやつがケガをしてお前のところにやってきたらお前はそいつを助けるのか。」
異倫は不敵な笑みを浮かべて問答を続ける。だが、藤依はたじろがない。
「困っている人を助けるのが私の正義。醫の業を持って癒をなす。私が師から受け継いだ言葉です。」
「“己の心に従って生きよ”、これは私が師から受け継いだ言葉だ。」異倫も一歩も引かない。
「これ以上は時間の無駄ですね。私は引く気がないですし、貴方もそうだ。やはりこれで幕引きにするしか無いでしょう。」。異倫に向き合い、藤依が拳を突き出す。
異倫がにやりと笑う。
「そうだな。思い出話に花を咲かせるわけでもないし。議論をしても無駄だ。書斎で拳を合わせるのは無粋だ。こっちに来い。我々が拳を交えるのにふさわしい舞台を用意してある。」
異倫は書斎の奥へ行き、ある本棚の前で止まった。
「そうそう、ここだここだ。“anatomia(解剖学)”、”biocombat(生物格闘技)”、“conqueror(征服者)”」
異倫がぶつぶつ言いながら本棚の本を順番に押し込んでいく。すると、書斎が轟音とともに揺れ始めた。異倫の眼の前の本棚が奥へ移動し、左右に分かれた。書斎の先に隠し通路が現れた。