小説(マンガ化希望)

第41話 腕神経叢

腕神経叢、それは第5頸神経から第1胸神経までの神経根に由来し、それぞれが互いに分岐合流しながら形成する末梢神経群ことである。簡単に言ってしまえば首から腕にかけての神経ネットワークである。脊髄から分岐したばかりの神経根はいくつかが合流し上中下の神経幹を形成する。そこからまた分岐、合流をして今後は外側、後側、内側の神経束を形成する。その後はそれらの神経の束が上肢の先に向かいながら分岐していき、筋皮神経、正中神経、橈骨神経、尺骨神経、腋窩神経へとなる。

「左腕が使い物になりませんね。」

「通常の打撃技に加えて内部破壊も加えた。手応え的には左の腕神経叢の神経束レベルだろう。神経縫合でもしない限り後遺症は免れまい。神経縫合をしたとて後遺症が残らない保証はないがな。」

並の格闘家であれば激しく動揺するところだろう。しかし、藤依は違った。強敵を前にし、左上肢が使い物にならなくなっても冷静であった。相手の攻撃の勢いを殺したおかげで軟部組織のダメージはそこまで強くない。だが、これは異常所見を言わざるを得ない。なぜなら、神経が断裂するほどの強烈な一撃であれば、皮膚や皮下組織へのダメージもそれなりに大きくないといけないからだ。腫脹や疼痛はあれど、打撲痕はかすかで、変形もなかった。けがの重症度と体表所見が不釣り合いだ。

「片手落ちのお前にやられる私ではない。勝負あったな藤依。内部破壊(インナーブレイク)の使い手はごく僅かだ。」

「ええ、秘伝の技ですから。その原理から応用まで知る人は少ないでしょう。」

「冥土の土産にとしてお前にその秘密を教えてやろう。」

「氣でしょう。」藤依が答えると、異倫はやや驚いたような顔をした。

「ふっ、なかなか底の知れぬ男よ。ここで倒すしかあるまい。」

異倫が藤依に突進し、左の正拳をはなとうとする。藤依は右手でカウンターを合わせるが異倫の初撃はフェイントであった。左腕が使えないとどうしても動きに精彩を欠く。身をかがめた異倫の右正拳が藤依の胸に炸裂した。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。