熱傷は毛嫌いされますが、限局したものであれば救急外来での処置は簡単です。外科系当直の先生であれば対応が求められますので学んでおきましょう。
小難しい話はしません。花火で手を火傷したとか、カップ麺のお湯を足にこぼしてしまったという程度の熱傷について主に解説します(興味がある人向けに最後にアドバンスな内容はまとめておきます)。
まず前提知識から整理しましょう。
まず熱傷深度についてです。熱傷は障害された組織の深さに応じてⅠ度からⅢ度に分類されるのでした。Ⅰ度は日焼け、Ⅱ度は水ぶくれ、Ⅲ度は皮膚壊死です。
| 深度 | 障害組織 | 外見 |
| Ⅰ度 | 表皮 | 発赤 |
| Ⅱ度 | 表皮~真皮 | 水疱形成 |
| Ⅲ度 | 皮下組織 | 羊皮紙様、レザー様、炭化 |
次に熱傷範囲です。手掌法や9の法則を覚えていますか。手掌法は患者さんの手掌1枚分が体表面積の1%というものです。ぶっちゃけ限局した熱傷であれば手掌法で十分です。熱傷を自分の専門として診ている先生でなければこだわる必要はありません。そもそも、熱傷範囲は初回の診察だけでは確定できないのです。

熱傷は深さと範囲が大事です。いずれも経過中に変わります。
「意外と深かった(後々色が悪くなってきた)。」
「正常に見えたところにも水疱が出てきた」ということはありえます。
だから、後日紹介を受けた熱傷の先生(皮膚科、形成外科、救急科)がそこを評価すれば良いのです。
限局した熱傷患者が来たらまず冷水で局部を洗浄しましょう。冷却により疼痛軽減、熱傷進行予防が図れるとされますが、病院に来る頃にはもう冷めています。なので、私は救急外来で冷却していません。さっと表面を洗っておしまいです。家で流水を用いて洗って冷やしてきたという患者さんもいるのでそういう場合は追加洗浄まではしません。すぐに処置に移れるので感謝します。
さて、次は被覆です。バリア機能を失った皮膚を保護したいわけなので、ワセリン基材がよいでしょう。具体的にはワセリン、ゲンタシン軟膏、バラマイシン軟膏あたりです。抗炎症作用を持つアズノールでもよいです。同じく抗炎症作用を目的としてステロイド入り軟膏(デルモベート、リンデロンなど)を用いても良いです。
上記であれば、救急外来に必ずあるはずです。初期は浸出液も多いので軟膏を塗ったら集めにガーゼを当ててテープなり、包帯なりで固定しましょう。軟膏を多めに塗るとガーゼがひっつきにくくて次回の包交が楽です。メロリンガーゼというひっつきにくいガーゼもあります。あとはそのまま翌日に専門の先生に引き継げばよいです。連休などですぐに受診できない場合は自分で包交してもらうか、外来に来てもらって包交するかです。包交も簡単です。ガーゼを取って、洗って、また軟膏を塗って被覆するだけ。1日1回、同じようにしておけばよいです。
自己包交できそうなら鎮痛薬に加えて軟膏を処方してあげましょう。
ちょっとした熱傷なら簡単に処置できますので身構えずに診察してください。
<以下、ややアドバンスな内容>
熱傷の原因には火炎、高温液体、爆発、電撃、高温固体、化学物質など様々なものがあります。火災による受傷もあり、その際は気道熱傷や一酸化炭素中毒にも気をつけます。口腔内、鼻腔内の煤や鼻毛や前髪の焦げに注意しましょう。気道熱傷の所見があれば気管挿管を検討します。気管挿管をするクリアカットな基準はないです。迷ったら挿管しておいたほうが後悔が少ないです。喉頭ファイバーがあればのぞいてみるのもよいでしょう。
熱傷指数(burn index: BI)を算出できますか。「Ⅲ度熱傷面積+Ⅱ度熱傷面積/2」です。
BIに年齢を足すとprognostic burn index(PBI)となります。熱傷の重症度をかなり正確に反映する数値と言われています。PBI<70までは死亡率10%未満ですが、PBIが100を超えると死亡率は急上昇して約65%になります(過半数が死亡=予後不良)。PBIが120を超えると死亡率は90%を超えます。重症熱傷が入院してPBIが100を超えていると、「厳しい戦いになるぞ」と思います。家族にもそういった話をします。
熱傷面積の出し方は上述した手掌法と9の法則が有名ですが、より専門的に熱傷診療をする医師はLund and Brouderの法則を用います。これは部位別により細かく熱傷面積を算出するものです。私は図表をプリントアウトして色鉛筆で熱傷部位を塗っていました。熱傷面積の算出についてまとまったサイトがあったので貼っておきます(https://knowledge.nurse-senka.jp/500284)。
体表の30%を超える熱傷が広範囲熱傷と呼ばれ、全身の臓器に影響がでます。間違いなく3次医療機関での集中治療が必要でしょう。
熱傷患者を入院させるかどうかは何を基準に考えたら良いでしょう。これもクリアカットな基準はありませんが、Artzの基準(下表)が参考になります。

*上図は看護師さん向けのサイトから拝借しました(https://www.kango-roo.com/learning/4961/)。
Ⅱ度熱傷15%以上、Ⅲ度熱傷2%以上なら入院加療が良いということになります。ただ、これはあくまで目安です。小児や高齢者ではもっと入院の閾値を下げるべきです。9の法則だと上肢1本分が体表の9%に当たります。熱傷面積が成人で15%以上、小児で10%以上になると輸液が必要とする文献もあります(熱傷治療マニュアル改定2版)。Artzの基準に照らすと片腕1本まるまるⅡ度熱傷でも外来通院ということになりますが、片腕1本まるまる熱傷があったら結構きついのではないでしょうか。Artzの基準が示されたのは1969年と古く、その基準の妥当性については検証が不十分だと言われています。
次に熱傷深度ですが、熱傷深度はⅠ~Ⅲ度が基本ですが、Ⅱ度が浅達性Ⅱ度と深達性Ⅱ度に分かれます。熱傷はグラデーションがありデジタルで切れるものではありません。水疱形成された皮膚面が赤っぽければ浅達性Ⅱ度ですし、白っぽくなって羊皮紙様に近いようなら深達性Ⅱ度に分かれます。瘢痕が残るのは深達性Ⅱ度からです。そして、外科的治療を検討するのも深達性Ⅱ度からです。
熱傷と言えばParkland(Baxter)の公式です。アメリカのパークランド記念病院のチャールズ・R・バクスター医師が考案した式だからこう呼ばれます。このパークランド記念病院ですが、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された際に死亡宣告が行われた病院だそうです。
話がそれましたが、式は以下のとおりです。
受傷後24時間の総輸液量=4✕熱傷面積(Ⅱ度+Ⅲ度)✕体重(kg)
来院後ではなく、“受傷後”というところに注意してください。この半分を最初の8時間で投与し、次の16時間で残り半分を投与します。
重症熱傷患者がきたら迅速にABCを評価し、手早く熱傷面積を算出し、熱傷処置を行い
被覆し、上記公式に従って初期輸液を開始するのです。気道熱傷があれば腫れた喉頭に気管挿管をしなくてはいけないし、胸部のⅢ度熱傷で皮膚が固くなり拘束性障害が生じるなら減張切開が必要になります。こうなってくると、救命センターの救急医でないと太刀打ちできません。
ICUに上げた後、輸液管理、栄養管理、創部処置、感染管理、リハビリ・拘縮予防、手術(デブリードマン・植皮)、血栓対策、疼痛管理、精神的ケア、周術期管理、等々様々な管理が求められます。広範な知識が求められ、それこそ重症患者管理のメドレーリレーのようです。総合力が試されます。毎日少なくとも1回は包帯交換が必要で、全身の包帯を交換するのは骨が折れます。重症熱傷患者の管理は本当に大変で、私は正直もう腹いっぱいです。
熱傷手術はデブリードマンと植皮を行います。デブリードマンは熱傷範囲が決まってきてから行う場合もありますが、Ⅲ度熱傷が明らかであれば超早期(受傷後48時間以内)に行う場合もあります。植皮では分層植皮が多いですが、広範囲熱傷では採皮部が少ないため、培養表皮を用いることもあります。小さな皮膚を培養し植皮する表皮を増やすものです。ジェイスといいます。採皮した皮膚を特殊な液体に浸して細胞レベルにばらし、それをスプレーにして撒くというのもあります。こちらはリセルといいます。
熱傷患者を診た時に覚えておいてほしいのが虐待のケースです。子どもは好奇心が強い半面危険余地が難しく、熱いカップ麺のお湯やヤカンのお湯などをこぼしてしまうケースがあります。背が低い子どもがテーブルの上に手を伸ばしてお湯をかぶってしまうこともあります。危険なものは子供の手の届くところに置かないという大人の配慮が必要です。子ども(ときには高齢者)の熱傷で熱傷の形が人工的だったら虐待を疑ってください。アクシデントで受賞する場合、熱さを感じた瞬間に逃避運動を行うのが通常です。そのため、熱傷面の重症度は不均一で、健常部との境界が不鮮明になります。熱傷面が均一で、丸だったり四角だったり形が人工物を思わせるような場合は注意してください。虐待を疑ったら処置をするなどの理由で子どもをいったん預かり、念入りに観察し写真を残します。話ができる子なら事情を聞いてもよいでしょう。虐待だと判断できれば詳細な事情聴取は専門家に任せます。ケースワーカーや小児科との連携も必要です。
熱傷は非常に奥深く、それだけで分厚い一冊の本ができあがります。ガイドラインも出ていますので(熱傷学会、皮膚科学会がそれぞれ出している。)、興味がある方は一読をおすすめします。
熱傷学会の熱傷ガイドライン
https://www.jsbi-burn.org/members/guideline/index.html
皮膚科学会の熱傷ガイドライン
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/nessho2023.pdf