人の手は実によくできています。今パソコンで文章を打っていますが、指一本一本がなめらかに動き、思い通りにキーボードをカタカタ叩いてくれます。指だけではなく、手関節や肘関節の動きが加わることで手は様々な動きが可能です。センサーとしても優れていて、触った時に物体の温度や質感が瞬時にわかります。こんな便利なもの失いたくないですね。
今回は指切断のお話です。
指の切断なんて考えたくないですね。私は痛いのが苦手なので万が一そんな状況になったら気を失ってしまいそうです。
指の切断なんて大げさな、という人もいるかも知れませんが。たまに救急外来で見かけます。工場の機械で指を落とす人もいれば、丸鋸などで木材を切断している時に指を落とす人もいます。丸鋸やチェーンソーなどの電動工具が多いですね。一瞬のできごとです。
さて、指を切断してしまった人がいたら現場ではどうしたらよいでしょう。
まずすべきは安全確保です。
例えば、丸鋸の電源を切る、機械を止める、といったことです。受傷者が驚いて丸鋸を落としたり振り上げたりするかもしれません。倒れて隣で作業している人にぶつかるかもしれません。安全確保、すごく重要です。
次に助けを呼ぶことです。切断は迷うことなく救急搬送です。遠慮はいりません。119番をしなければいつまでたっても救急隊は来ませんから、まず119番をしてください。
助けを呼んだら圧迫止血です。滅菌物などあるわけないので、比較的きれいなハンカチやタオルで圧迫止血してください。気持ち悪くなって倒れる人もいるので、できれば落ち着かせて座らせましょう。横になってもらっても構いません。指は圧迫しながら、心臓より高い位置に持っていきます。
止血するためによく中枢側(体幹に近い方)の腕を縛ってくれる人がいます。医療ドラマとか何かの講習会で習ったのだと思いますが、うまくできていないことがほとんどです。痛くて大変かもしれませんが、止血するなら圧迫止血の方が良いです。指の動脈なら腕を縛らなくても血は止まります。それと、中途半端な縛りは出血を助長します。
どうして出血が助長されるのか説明します。採血をする時に腕を縛りますよね。静脈の流れをせき止めて静脈をうっ血させ、拡張させるためです。中途半端に縛ると末梢側の静脈出血が増悪します。かといって、動脈遮断はされていないので、血液は供給され、結果として出血が増えるということです。緊縛するなら動脈も遮断しなければ出血の制御はできません。しかし、動脈を遮断するということは傷ついていない組織も虚血となりダメージを受けます。我々が動脈を遮断する時は必ず何時何分に遮断をしたか記録します。遮断時間を管理しなければならないからです。結論として圧迫止血が一番間違いありません。
切断された指ですが、できれば回収してください。再接着の可否は医師が判断します。ベストな保存方法は湿らせたガーゼにくるんでからビニール袋に入れ、そのビニール袋を冷たい水につけて冷やしておきます。水につけて浸軟しても困りますし、冷やしすぎて凍傷になっても困ります。ガーゼは固く絞ってください。水には直接漬けないでください。一応説明しましたが、指を回収しておいてくれれば救急隊がうまくやってくれます。
救急隊は指の状態を病院に伝えて受け入れ先を探します。再接着できる病院を探しますが、指の再接着ができる病院はかなり限られています。切断された指がなかったり、指の状態が悪かったりすれば、再接着手術できない(が、傷の処置はできる)病院に搬送されることもあります。
大原則ですが、ケガをしないに越したことはありません。注意一秒ケガ一生。電動工具などを使用する際は大げさなくらい安全に配慮して作業しましょう。