交通事故でケガをして救急外来を受診する人がいます。救急外来をやっていると本当によくいます。そもそも交通事故は年間どれくらい起きているのでしょうか。
4択クイズにしてみましょう。
- 9万件
- 14万件
- 29万件
- 35万件
さあ、どの程度でしょうか。ちなみに正解は2024年のデータを参考にしています。
かっこいいクルマやバイクの画像を見ながら考えてみましょう。


答えは③の29万人です。正確には2024年に290895件の事故が起きています。負傷者数は434395人、死者数は2663人でした。予想より少なかったでしょうか、それとも多かったでしょうか。
交通戦争という言葉を知っていますか。交通事故による死者数が戦争の死者数と同じくらい増えたためそう呼ばれました。
本邦のワースト記録は1945年の16765人です。これに対して日清戦争(2年間)の死者数が17282人でした。いかに異常な数字か分かると思います。交通事故で戦争並みに人が死んでいたのです。
この後、さすがにこれはまずいと思った国が本腰を挙げて交通安全運動を行い、現在に至っています。当時の死者数を考えるとだいぶ減ったことがわかります(警察をはじめとする交通安全に関わる方、ありがとうございます)。
さて、交通事故に遭って怪我をした人は救急外来へ受診します。けが人が出ていればそれは物損事故ではなく人身事故です。人身事故の場合は警察に警察用の診断書を出す必要があります。打撲なり捻挫なり、確かにケガをしたという証拠のためです。そのため救急外来を受診した人は口を揃えてこう言います。
「警察の人に診断書をもらってくるように言われたんですけど。」
時間外の救急外来で診断書は書いてもらえるのでしょうか。これはケースバイケースです。診察した医師や病院の方針によります。
時間外の救急外来というのは本来応急処置のみです。重症度や緊急度が高くなければ、「日中に専門の外来を受診してください。」でおしまいです。時間外はヒトもモノも限られています。営業時間内でさえ忙しく、いつまで待たせる気だと患者さんからクレームが来るくらいなのに、時間外ではすべてのサービスを行うことができません。診断書を書くという業務は間違いなく重荷です。
患者さんの本音
・また病院に来るの大変だよ(仕事、育児など)。
・今日一緒に出してくれないかな。
・紙一枚でしょ。
・警察に早めって言われた。
医療者の本音
・忙しいから営業時間外に書くのはなしにして欲しい。
・アルバイト(非常勤)なので、常勤の医師に診断書は書いて欲しい。
・専門じゃないから自信ない(交通事故なら裁判絡みになるかも)
・後から症状が加わることがあるし、事故当日じゃないほうがいいよ。
これに関しては書いたほうが良いとか書かないほうが良いとか厳格な決まりがありません。感覚としては書かない医師のほうが多いと思います。
「ケガも打撲程度だし。また来てもらう方が大変だから出しちゃうか。」
という医師もいるでしょう。
「時間外になんでもかんでもは良くない。救急外来では最低限のことしかできないよ。」
という医師もいるでしょう。
対応は医師や病院により色々です。
正直、夜中に友達同士とか家族とかで出かけていた車が事故にあって、数人でやってきて、全員分の診断書をくれと言われると、「うわっ」と思います。
2001年、時間外に診断書を書かない派の医師が責められるという事件がありました。毎日新聞の記事ですが、内容は「当直医が診断書を作成拒否」というものです。医師法には診断書の交付の求めがあった時は特段の理由がなければこれを拒んではいけないと記載されています。記事ではこの当直医が医師法違反だというのです。臨床医としてはムッとする記事でした。これに関して臨床整形外科学会が反論しています。
こちらをご覧ください。
私は患者、医療者どちらの気持ちもわかりますが、仕事中はどうしても、診断書は時間内にして欲しいなぁと思ってしまいます(そう思いながらも時間外に診断書を発行したことは何度もあります)。
いくつかの病院のホームページでは、“うちは時間外の診断書発行はなしにしてるよ。日中受診してね”いう旨が記載されています。
https://ocgh.jp/emergency_medical_care
https://noe.saiseikai.or.jp/gairai/kyukyu.html
急患をたくさん受け入れている病院ほど上記の対応になると思います。言い方は悪いですが、診断書の発行なんてしている時間がないのです。夜間などは診断書は発行しないというところが多いと思います。
医療者としての私からみれば、でしょうねという感じ。
でももし受診する側だったら、書いてくれないかなーって思っちゃいます。
私が当直する時は、勤め先の医療機関に病院としての対応を確認し、そのスタンスに合わせるようにしています。「あの先生は書いてくれた。今度の先生は書いてくれない。」となるとやはりトラブルのもとです。
皆さんは、打撲やむちうち程度で、待てるなら日中に整形外科を受診して診断書の発行をお願いするのが良いと思います。時間外に診断書がもらえなくてもどうか怒らないでください。