けが

ヘビに噛まれた

動物に噛まれたキズは感染のリスクが高いため時間外であっても病院に行くことをおすすめします。擦り傷程度でなおかつ十分水道水で洗浄できたのなら病院へ行ってももうやることはないかもしれませんが、1度みてもらった方が無難でしょう。

さて、今回はヘビです。

毒ヘビでなければ犬や猫といった他の動物咬傷(どうぶつこうしょう)と対応は同じです。傷口を洗浄して鎮痛薬と抗生剤を処方して帰宅となります。傷口は小さな穴(ピンホール状)なので縫合は要しません。

さて、毒ヘビだったらどうしたらよいでしょうか。

日本で遭遇しやすい毒蛇はマムシ、ヤマカガシ、ハブの3種類です。

それぞれのヘビの顔や姿をイメージできますか。

難しいですよね。そもそもヘビを見る機会ってそんなにないですから。よほどのヘビ好きでないとわからないと思います。しかも、ヘビに噛まれたらこちらも動揺していますし、ヘビもすぐに草むらに逃げ込んでしまいます。

群馬県には日本蛇族学術研究所(ジャパンスネークセンター)があります。日本で唯一の蛇族研究所です。この施設のホームページにこう書いてあります。

「蛇の判別は難しい。」

あっさりしていますが、本当にそうなのだと思います。例えばヘビでも子ヘビと親で模様が違ったり、同種のヘビでも個体により模様が全く違ったりするそうです。

上記のホームページにはこうも書いてあります。

「比較的よくマムシを見て知っている農家の人でも、下の写真のようにいろいろな色彩のマムシがいるため、判別を間違っている場合もしばしばある。そのため病院で間違った治療が行われることになる。このような判別間違いは多く、毎年ヤマカガシ咬傷と診断されてヤマカガシ抗毒素の依頼があるが、そのほとんどが誤診である。」

というわけで、そのヘビが毒ヘビかどうか深く考えなくていいです。写真を取ってきてもらえば典型的なマムシとかは分かると思います。でも医師もそこまでヘビに詳しくないですから。写真をみても結局わからないこともあります。

さらに言えば、毒ヘビに噛まれても毒が注入されないケースもあります。これをdry bite(ドライバイト)といいます。ヘビが毒を使ってしまっていたり、うまく噛みつけなかったりした場合です。

色々書きましたがとにかく、皆さんはヘビに噛まれたら時間外でも病院に行きましょう。日本の身近なヘビの毒によって、その場でみるみる弱って死亡することはありません(アナフィラキシーを除いて)。冷静に行動しましょう。

さて、ヘビに噛まれた患者さんが受診したとき我々はどのような診察をするでしょうか。まずは傷口をしっかり洗浄します。話はそれからです。

噛み傷の形状でヘビを判別することは可能でしょうか。ヘビによって噛み傷が異なり、噛まれたヘビの種類を推定するのに役立ちます。しかし、医師が噛み傷を診て毒ヘビかどうか判断できるのかというと難しいです。患者さんの手足に教科書の図みたいなきれいな歯型が残っているわけではありません。

「おれ、ヘビ咬傷超得意!この噛み傷は〇〇へびだね。本州から沖縄諸島に生息していて、気性は荒いけど弱毒生で・・・。」という医師はいないと思ってください。

だいたいは「あー、ヘビですか。なるほど。ひとまず傷口を洗いましょう。」です。

腫れがひどければ毒ヘビの可能性が高いと判断します。犬や猫などの動物に噛まれても短時間で傷口が腫れあがることはないからです。

毒ヘビと分かっていれば経過観察入院をおすすめします。腫れが進行したり採血検査で異常が出たりしていれば血清を打つこともあります。昔は毒が回らないように手足を縛ったり、噛み傷の周りを切開して毒素を組織から出そうとしたりしましたが、今はやりません。

毒ヘビとわからないケースは対応が分かれます。

「毒ヘビの可能性が否定できないし今後症状が出てくるかもしれないから入院しましょう。」という考え方もあるでしょう。

「今は腫れもほとんどないし、他の症状も出ていないから処置をして帰りましょう。腫れがひどくなったりおかしいと感じたりしたらいつでも受診してください。」という対応もありえます。

「救急外来で3-4時間休んでなんともなければ帰りましょう。」という対応もあるでしょう。

まとめます。ヘビに噛まれたら時間外であっても病院受診してください。外科系の先生がいるところが良いです。ただ、ヘビ咬傷は地域差があり、外科系の先生でも診たことがないとか、対応がわからないという方もいます。その場合は救命センター受診を進められるかもしれません。いずれにせよ1度地域の病院に問い合わせてみてください。毒ヘビの場合入院が必要で、場合によっては血清(毒素を中和する)を打つ必要があります。

以下に紹介するのは日本で唯一の蛇族研究所、ジャパンスネークセンターの書籍です。この施設には日本中からヘビの相談や問い合わせが入ります。ヘビ毒の研究や血清の管理を行っています。目立たないですが縁の下の力持ちとしてヘビ毒診療を支えてくれています。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。