(はじめに、今回の「死」は、年老いた先にある死を想定しており、加害や不慮の事故による死は除いて考えてください。)
一度きりの人生をどう生きるのか。
生きている間は生き様が重要です。
子どもや後輩など次世代の者にどういう背中を見せるのか。できたらかっこいい背中を見せたいと私は思っています。
本屋さんをのぞくと、より良く生きるための人生論や仕事論など様々な本が売られています。でも、死に様について書かれている本は少ないです。
一生の時間をどのように使うかというのはまさにその人の生き様だと思います。
人生においてあれをやりたいとかこれをやりたいとか、生き方について考える機会はあると思います。では、死に方について考えたことはありますか。
先日、97歳のおばあちゃんが心肺停止で施設から救急搬送されてきました。救急隊が施設職員に聴取したところでは、以下のようでした。ここ1週間食事が食べられなくなり、寝ている時間も長くなった。ここ数日は特に反応も悪くなり、食事はほとんど食べていない。朝に様子を見に行ったところ、呼びかけに全く反応がなく、脈を確認したら触れなかった。息もしていないようだったため救急要請した。
それ寿命だよ!と思わず言ってしまいました。
家族の方は?と聞くとまだ連絡がついていないと。
急変時の方針は?と聞くと、心臓マッサージはしないで欲しいなどの意思表示はなかったと。
ということで、痩せこけた97歳が心臓マッサージを受けていました。
家族の連絡先がわかったのですぐに連絡して事情を話し、蘇生を中止しました。
後で息子さんと娘さんが到着されたので、改めて状況を説明し、お看取りさせていただきました。息子さんも娘さんもしっかりした方で、状況をよく理解してくださり、感謝の言葉もいただきました。お看取りの後、母親の手を握って涙を流していて、故人の方は良いお母さんだったんだなと思いました。
ただ、この年齢であればいつ亡くなっても不思議ではありません。そしてそれはさすがに寿命です。心臓が止まったときの話し合いをしておけば、平穏な死を迎えることができたのにとも思います。
このような方が病院へ搬送されると、心臓マッサージや除細動(いわゆる電気ショック)の他に、採血や気管挿管などの検査や処置を受けることがあります。そして、死因が明らかでない場合は警察による検視が入り、関係者に事情聴取が入ります。病院だけでなく、警察や施設を含めて少しおおごとになってしまいます。今回のケースでも警察が入りました。
救急科は科の性質上看取りが多いです。数え切れないほどの患者をお看取りしてきました。
たくさんの家族に囲まれ、涙されながら看取られる人もいれば、これまで家族にさんざん迷惑をかけ、あっさりした雰囲気で看取られる人もいます。
こういうとき、死に様は生き様の集大成なのだなと思います。
人は必ず死にます。もちろん、死に方は選べず不慮の事故で亡くなる方もいます。でも、もし、あなたやあなたの親が高齢となり、体が衰えた先に最期を迎えるのなら、どのような最期が良いですか。
生き様について考える機会があるように、死に様について考える機会があっても良いと思います。
穏やかな最期を迎えるため、私は以下の著書をおすすめします。
「平穏死」のすすめ 口から食べられなくなったらどうしますか (講談社文庫) [ 石飛 幸三 ]価格:660円 (2025/4/18 13:27時点) 感想(11件) |
家で死のう! [ 萬田 緑平 ]価格:1540円 (2025/4/18 13:28時点) 感想(4件) |
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