挫創の処置などを行う時局所麻酔をうちます。皮下組織にキシロカインを注入するだけですので非常に簡単な処置です。技術的には誰でもできると思います。ただ、何事もそうですが、「できる」の中にはクオリティーのバリエーションがあります。今回は研修医のみなさん向けに局所麻酔のコツを伝えます。
まず針の太さですが、最初は麻酔が効いていないところに針を刺入しますから、細いに越したことはありません。23G(ブルー針)が良いでしょう。小児の場合はもっと細い針を使用することもあります。
今回は単純な直線型の挫創があったとしましょう。針の刺入はどこからやりますか。
上の矢印はキズの外側から、下の矢印はキズの内側から針を刺入しています。
これ、正解は下の矢印です。外側から指すと表面に新たな外傷を追加することになります。また理論上、体表の菌を創内に入れることになります。皮膚は針が膜を貫くときに痛みを感じるので創内から針を刺入したほうが痛みが少ない可能性があります。
よって、局所麻酔は創内から行うのが正解なのです。
注入速度はゆっくりな方が痛くないです。小児では特に意識しましょう。
まじめな研修医に局所麻酔の1回注入量を聞かれたことがありますが、決まっていないし、考えたこともありません。組織が多少ぷくーっとなって、痛みが取れていれば大丈夫です。言い方は乱暴ですが、処置をするにあたって、痛みが取れていればとりあずはいいわけです。
創が長い場合、下図のように手前から局所麻酔を打ちましょう。そして、鎮痛ができた組織(丸枠)からまた針を刺入します。こうすればより優しい麻酔になりますね。
長々書きましたが、ポイントは①創内から針を刺入する、②手前から針を刺入して局所麻酔が聞いた範囲からまた針を刺入するということです。
最後に、小児の顔面挫創で局所麻酔する時のコツを伝えます。これは研修医のときに形成外科の先生から教えていただきました。まずは下図をご覧ください。
目尻のところを切ってしまっていますね。
局所麻酔して縫っておしまいなのですが、どちらの方向から針を刺入しますか。
内側から外側?外側から内側?
こういう創に対しては内側から外側に向けて麻酔します。
小児は痛みと恐怖で暴れます。処置のときに押さえさせてもらって縫合するときもあります。小児が頭をぶんぶん振った時のことを想像してみてください。もちろん頭を押さえてはいますが、押さえが外れてしまうかもしれません。
もし外側から針を進め、この子が左を急に向いたら・・・。
非常に怖いですね。
たかが局所麻酔ですが、こうして考えてみると小さな工夫でクオリティーをあげることができそうですね。上級医の処置をただ見ていてもなかなかわからないことだったりします。
明日からの診療に役立てていただけたら幸いです。