「脳震盪を起こしている今がチャンス。」
しかおは勇猛果敢につっこむ。あらわになった顔面を中心に拳打を繰り出すがすべてさばかれてしまう。
「これならどうだー。」
右ストレートをいなされ、体が左に流されたところからの後ろ回転蹴りだったがこれも上段受けでガードされた。
「今度はこちらから行こう。」
甲冑の男は間合いを詰めてきた。上段、中段の正拳突きを連続で放ってくる。しかおが後ろに下がりながらそれを躱すと、続けて勢いをつけた前蹴りを放ってきた。しかおは避けきれずに両手でガードするが勢いを殺しきれない。
「ぐうっ」
思わず声が漏れるほどの重たい蹴りが腹部に入る。
腹部にはいわゆる内臓が詰まっており人間、もとい多くの生き物にとって急所と言える。胸部臓器は肋骨という硬性組織が守ってくれるが、腹部を守る骨はない。腹部は腹直筋や腹斜筋、広背筋などの筋組織にしか守られていない。無論内臓を骨格筋のように鍛えることはできず、腹回りの筋肉を鍛えて防御力を高めるしかないのだ。
反撃をしたいしかおだったが、すぐに攻撃を繰り出せなかった。先に受けた腹部への蹴りは想像以上に重くしかおの腹部臓器に響いていた。横隔膜が痙攣し息ができない。
“地獄の苦しみ”
ボディーブローを受けたボクシング選手などはそう表現する。攻撃が効いていることを悟らせてはいけない。しかし、しかおの表情の変化や身振りの変化を敵がは見逃していなかった。