顔面骨骨折の考え方
前回の記事で顔面外傷について勉強したのでもう少し深堀りします。
(前回:顔面のけが|救急坊主の初期対応ブログ)
記事のベースになるのは形成外科学会のホームページです。若手の頃、顔面外傷について勉強していたときに形成外科学会のホームページの説明が分かりやすくて顔面骨骨折への理解が進みました。今回はそれをベースに私の経験や知見を上乗せして記事を書こうと思います。
まず顔面骨です。はい、みなさんイメージはできていますでしょうか。

どういう折れ方をしたら保存的治療で、どういう折れ方をしたら形成外科医は手術をするのでしょうか。
形成外科学会のホームページでは顔面骨の手術適応を“交通事故を起こした車”に例えて説明しています。皆さん、車に乗っていて事故を起こしたとしましょう。ちょっとこすったくらいでは自動修理工場へ車を入庫しないと思います。車好きな人なら、ちょっとしたキズですぐに自動修理工場行くかもしれません。でも、何日か車を預けて(入院)修理を急ぐでしょうか。
どうなったら車を預けて修理(板金)が必要なのかちょっと考えてみてください。
はい、考えましたか。
もう少し考えてください。答えは4つあります。
はい、では発表します。
1つ目は、ドアが開かなくなった場合です。ドアフレームが歪むとドアの開閉ができません。これは絶対修理ですよね。
2つ目は、タイヤがうまく回らない場合。タイヤ付近のボディが歪んでタイヤに干渉してしまうとうまく走りません。
3つ目は、電気系統がやられた場合。電気がつかないとかワイパーが正常に作動しないとかいった場合です。コードが傷ついてしまったんですね。
4つ目は、見た目の問題。車が正常に走行していればとりあえずはいいわけです。あとは見た目を気にするかどうかで、気にするのなら凹みやこすれはきれいにしたほうが良いでしょう。小さなキズならそのままにしている人もいますよね。
この4つが手術適応になります。そもそも手術なんてしたくないですよね。ただ、物理的にというか外科的になんとかしないといけない場合は手術するしかないわけです。例えば、骨がずれて神経を絞扼していて神経障害が出ている場合、薬云々じゃなくてもう絞扼を解除してあげないといけないわけじゃないですか。そういうことです。
では各論に行きましょう。まずはよくある鼻骨骨折から。
<鼻骨骨折>
若い男性に多く、原因にけんか、スポーツ、交通事故などがあります。ラグビーのようなコンタクトスポーツで多いですね。鼻骨の解剖を思い浮かべてください。どんな症状が出そうですか。鼻の変形は起こりそうですね。鼻の変形にはつぶれて低くなる鞍鼻と斜めに傾く斜鼻があります。あとは鼻腔が狭くなって鼻閉症状がでるかもしれません。あとは単純に鼻出血ですね。
ということで、変形、鼻閉があると手術が検討されます。逆に、CTで骨折は認めるけど見た目じゃわからないし、鼻詰まりも気にならないよ、という場合は保存です。
受傷直後は腫れているので変形の評価が困難です。そのため時間をあけて、再診し、そこで決めることが多いです。受傷後2週間すると手術のタイミングを逸しているので、受傷後1週間前後で決断を下していることが多いです。
<頬骨骨折>
まずは解剖をイメージしてください。臨床に出てから生理学、解剖学の重要性を感じます。本当に大事です。2つ載せておくのでよくみてしっかりイメージできるようにしてください。


頬骨は頬の膨らみを形成していたり、眼窩外側壁を構成していたりします。したがって、これが折れて陥没すれば、眼球の陥没や突出、頬部の平坦化が起こります。眼窩下孔からは眼窩下神経が出ています。ここに骨折の影響が出ると頬部の感覚障害がでます。(眼窩下神経は頬、上口唇、鼻の側面、歯肉の感覚を司る)。
頬骨の裏を側頭筋が通ります。頬骨弓部が陥没し、側頭筋に食い込むと側頭筋が弛緩しても顎が緩んで口が開きません。開口障害です。筋肉付きの画像を載せますのでこれもイメージできるようにしてください。
上記のような症状がでたら、もう薬でどうこうの世界ではないので、外科的介入、すなわち手術が必要です。
<眼窩骨折>
「下壁がやられたようだな。」
「くくく、奴は四天王の中でも最弱。」
「眼窩構成骨の面汚しよ」
というわけで、最も脆弱な下壁骨折が多いです。
眼窩内容が突出したり、嵌頓したり血腫ができたりします。そうすれば眼球運動障害、眼球の運動時痛、眼球陥凹などが起こります。鼻腔及び副鼻腔と交通すれば鼻出血や眼窩気腫を発症します。眼窩骨折の患者は鼻をかんではいけません。緊急で形成外科医をコールするのはトラップドア型で外眼筋が絞扼されている場合、迷走神経反射が起こり徐脈や低血圧が生じている場合です。
とう言うわけで、今回は具体例を上げながら、顔面骨の手術適応の考え方について説明しました。顔面外傷に対する皆さんの解像度が上がってくれたら嬉しいです。