小説(マンガ化希望)

第26話 膝裏の罠

「はぁ、、、、、はぁ、、、、」

お互い息が整ってきた。相手の隙を伺うがそう簡単にはいかない。均衡を先に破ったのは甲冑の男だった。正面から突っ込んでくる。がしゃがしゃと甲冑の音が室内に響く。右ストレートで殴りかかって来るのをしかおがサイドステップで躱す。続けて、裏拳。それも屈んで躱す。さらに突き上げるような蹴りが入るがバックステップでこれも躱す。

「チャンス」

相手の蹴りが空を切ったところでしかおが間合いを詰める。

「解剖学流体術奥義・空中足底蹴り!」

空中足底蹴りは足裏全面を押し当てるように放つ蹴りだ。足底は人体において最も皮膚が厚い。全体重を載せた足底の蹴りは相手を後方へ吹っ飛ばす。

しかおの飛び蹴りが相手の下腹部に直撃する。相手は腰が引けた形になり後ろに倒れそうになるがぎりぎり持ちこたえた。甲冑の上からの攻撃になるためパワーが伝わりきらない。

「効かないな。」

「わかってるよ。だからこうだ。」

しかおは側面に回り込んで低空の回し蹴りを放つ。

「解剖学流体術奥義・回転膝窩撃!」

回転膝窩撃は回転の威力をそのまま蹴りにのせて放つ回転蹴りだ。膝窩には膝窩動静脈が走り下腿を栄養している。また下腿を支配する主な神経の1つである脛骨神経も膝窩を走行しており、神経が破壊されれば下腿の運動、感覚が障害される。達人の蹴りは血管や神経だけでなく、靭帯や骨ごと関節を破壊し一瞬で相手を歩行不能とする。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。