小説(マンガ化希望)

第23話 階段の踊り場で

やまじの激闘の最中、先に行ったしかおと藤依はほのぐらい階段を登っていた。石造りの塔は頑丈そうだが重圧感がある。いつ、誰が作ったのかわからないが、年季が入っているようだ。階段の踊り場に着くと左右に中世ヨーロッパを思わせる甲冑があった。手の部分が変わった作りをしており、手背側に棘が何箇所もついている。

「なんで甲冑があるんだ。手の部分が変わった作りをしているな。まさかこれで殴って攻撃するのか。」しかおが訝しげに甲冑を眺める。

その時、甲冑が動き出し、しかおに殴りかかった。

「!!!」

ぎりぎりで甲冑の正拳をかわしたが、不意をつかれたため尻もちをつく形で倒れてしまった。倒れたしかおめがけて、棘のついた拳で甲冑が次の一撃を放つ。くらえば大ダメージだが避けられない。しかおは両手をクロスさせて顔面への直撃を避けようとした。

拳がその両腕の肉をえぐろうとしたその時、

「解剖学流体術奥義・膝蓋骨衝」

藤依の膝蹴りが甲冑の腕にヒットした。蹴り上げられた腕は上方向に跳ね上げられ、拳は空を切った。膝蓋骨衝は人体最大の種子骨である膝蓋骨を使った技だ。強烈な蹴り上げによって突き出された膝蓋骨は骨を粉砕する強烈な高速ハンマーである。近接状態で放つことが多く、視界の外から打ち上がった膝関節が下顎に強烈無慈悲な一撃として入ることになる。食らった相手は何が起きたかわからないまま昇天する。

「助かりました。」しかおが体勢を立て直す。

甲冑もバランスを崩したもののすぐに体勢を整える。こちらを向いて攻撃の機会をうかがっている。一体何者なのか。

*種子骨:腱の中に埋め込まれている骨。膝の膝蓋骨と手の豆状骨が代表例。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。