複数の黒い影が暗闇に見えたがよくわからなかった。
「どうした。」ムールが電気をつける。やまじ達は全員リビングに集まった。
「ママがいない!」マキが大きな声をあげた。マキの父親も含めて全員で家中を探したが見つからなかった。
「さらわれたんだ。なんてこった。」マキの父親が膝から崩れ落ちる。
「伊鈴の手下だ」
「私達を匿ったから狙われたのかもしれない。だとしたら申し訳ない。」藤依が声をかけた。
「私達が必ず奥さんを助け出します。」
「先生、すぐに出発しましょう。」やまじが道具を背負いながら言った。
「ママを助けて。」
「もちろん。」
予想外の襲撃に遭い、一行は出発を早めることにした。伊鈴のアジトは村はずれの森の中にあるという。再度の襲撃に備え、ムールが家に残ることになった。
「頼んだぞー。」ムールに見送られ、一行は家を出た。
藤依、やまじ、しかじの3人は急ぎ足で集落を抜け敵のアジトへ向かった。道は整備されておらず路面は悪い。気温は肌寒く朝霧が出ていた。遠くに見える森の中に怪しげな塔が見える。
「あそこか。」やまじが塔を見つめる。
「急ぎましょう。」藤依が声をかけ、一行は歩みを早めた。ちょうど夜明けだ。朝日に照らされた朝霧を3人の影が切って進んだ。