「私が説明します。」
話しかけてきたのはマキの父親だった。
一行はマキの両親の自宅へ行き、事の次第を聞いた。
「急なことでした。ちょうど1ヶ月くらい前、私達の村は奴ら襲われあっという間に支配されました。村の直ぐ側に金鉱があるので狙われたのだと思います。やつらは暴力で人を従え、無理やり金を採掘しています。採掘の知識もないのに、どんどん掘れと指示を出すから落盤事故も何度も起き、犠牲者も増えています。」
「あいつらは一体何者なんですか。」しかじが聞く。
「わかりません。しかし、取れた金は伊鈴(いりん)という男に献上されています。拳法家のようで、束になっても叶いません。逆らった者もいましたが皆殺されました。」
「なんて奴らだ。許せない。」
「待ってください。彼に逆らうのは無理です。不思議な術を使います。奴が拳を振るうとまるで刃物のようにものが切れてしまうんです。肉体はもちろん、鋼鉄さえも切断してしまいます。とても人間とは思えません。一度見せしめに村人が公開処刑されたことがあって、皆怯えています。」
「拳で人体を切断?まさか。」藤依の表情がこわばる。
「でも放っておけない。伊鈴を倒しに行きましょう。」やまじが言った。
しかじとムールも頷いている。
一行は伊鈴のアジトへ向かうこととした。
日が暮れるため、今夜はこのままマキの家に泊まることになった。出発は明日の早朝だ。
出発に備えて一行は早めに見を横たえた。
「きゃー!」
出発時間にはまだ早い未明、突然女性の声が響いた。