アナフィラキシー
若手医師向けです。気道閉塞しかかっているとかショックで心肺停止直前といった切迫した状態は抜きにして、基本的なエッセンスをお話します。
まず診断基準は以下のとおりです。

アナフィラキシーだと診断したらまずやることはアドレナリンの筋注です。
成人では0.5mg、小児では0.01mg/kg投与します。これ、筋注であることに注意してください。焦って静注してしまった事故が過去に起きており、死亡例もあります。アドレナリンは強力な強心剤です。急速静注していいのは心停止の場合だけです。
症状改善に乏しい場合は5-15分ごとに筋注してよいです。アドレナリンは早いに越したことはないです。所見が微妙でもアナフィラキシーが強く疑われる状況であれば筋注してしまいます。また、アナフィラキシーであれば禁忌事項はないので迷うことなく打ってください。
次にH1ブロッカー(ポララミン®)、H2ブロッカー(ガスター®)、グルココルチコイド(ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン)を投与します。これらはアドレナリンと比較するとエビデンスや効果に乏しいですが、現場ではよく使われます。
この間、輸液は早めに投与してください。急なアレルギー反応は血液分布異常性ショックを引き起こし、相対的に血管内ボリュームが足りていない状況です。ショックであれば2ルート確保しましょう。
βブロッカーを内服している患者ではアドレナリンの効果が通常より出にくいことがあり、その場合はグルカゴンを静注します。
二相性反応が知られています。すなわち、いったん症状が改善してもまた再燃するという場合です。そのため、原則として経過観察入院が必要です。二相性反応は多くの場合6-12時間後ですが、最大で72時間後まで起こり得ます。厳密な経過観察をするのであれば、2泊3日になりますが、患者さんに説明して1泊2日で帰宅としているところもあります。
アナフィラキシーは様々な症状が起こり得ますが、1番病勢を確認しやすいのは皮膚症状です。皮疹の推移を見て病勢を確認しましょう。
アナフィラキシーが改善傾向で、腹部症状もないなら食事開始可能です。
その後は原因物質を避けるように指導しますが、原因物質が不明な場合もあります。そのときはアレルギー科を標榜している医療機関に紹介します。
原因物質がわかっていて、それを避けることが困難な人にはエピペンを処方します。具体的には、ハチアレルギーのある養蜂家や庭師です。エピペンはファイザー社の講習を受けないと処方できないので、処方したい方は受講しましょう。
まとめます。アナフィラキシーに対してはABCの評価後、以下の薬剤を投与します。
・アドレナリン筋注(成人0.5mg、小児0.01mg/kg)
・H1ブロッカー(ポララミン®5mg)
・H2ブロッカー(ガスター®20mg)
・ステロイド(コートリル200mg、ソル・メドロール50-125mg)
・グルカゴン(1mg静注、βブロッカー内服中でアドレナリンの効果が乏しい人)
→経過観察入院。専門科へ紹介検討。
アドレナリン筋注以外はエビデンスがまだ乏しいのが現状です。とにかくアドレナリン筋注までを急いでください。