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傷跡は残りますか

お子さんがけがをして縫合処置をする時、よく上記の質問をされます。傷跡気になりますよね。特に顔面、そして特に女の子です。

結論から言うと”傷跡は多かれ少なかれ残ります”

残念ですが、傷跡をゼロにはできません。我々にできるのは傷跡を極力目立たないようにキズを縫うことです。

傷跡を目立たなくするにはどうすればよいでしょう。それは傷を面から線に変えることです。どういうことか図を使って説明します。

図の左側を御覧ください。切ったり、ぶつけたりして深いきずができます。このように皮膚の連続性が断たれた傷を「創(そう)」といいます。切り傷は医学的に切創(せっそう)、鈍的にぶつけて開いた傷は「挫創(ざそう)」です。

この創を縫ってあげると真ん中の状態になります。糸で縛って離れた皮膚を寄せてあげるのですね。傷がくっつけば抜糸します。すると、抜糸後は右側の状態になります。傷跡はありますが、線状で最初より目立たなくなりました。このように寄せてあげた組織同士がくっつくことを一次治癒といいます。

もし縫合しなかったらどうなるでしょうか。治らないということはありません。体が自己修復しようとして徐々にお肉がお盛り上がってきて創は埋まります。このように周りからお肉(組織)が盛り上がってきて傷口が塞がる治り方を二次治癒といいます。創に対して縫合せず二次治癒させるとどうなるでしょうか。下図を御覧ください。

創はふさがりましたが、皮膚は寄せていないのでもとの皮膚は離れ離れです。面で治ったので面の傷跡になります。

縫合するとしないとでは出来栄えが全然違いますね。”面を線にして目立たなくする”とはこういうことなのです。

我々にできるのは、皮膚をなるべく元の位置に戻し、傷跡をなるべく細い1本線にしてあげることなのです。

傷跡が目立たなくなるように縫ったあとも対応も大切です。まず、日焼けや物理刺激は避けるようにしましょう。色素沈着の原因になり傷跡が目立ちやすくなります。日焼けを避けるためには顔であれば帽子を被ったり、手足であれば長袖長ズボンを履いたりします。傷が小さければ絆創膏や包帯による被覆でも日焼けを防止できます。

物理刺激から守るという意味でも、なんらかの被覆材でカバーしてしまうのが良いと思います。私は救急外来においてあって皮膚に馴染みやすい茶テープを紹介していました。これを短く切って創に対して垂直に貼っていくとちょうどよい保護剤になります。

日焼けを避ける期間は特に決まりはありませんが、ずっと日焼けを避けているわけにもいかないので、3ヶ月くらいは日焼けしないように意識してくださいと話しています。強い根拠はありません。

ちなみに、創の縫合は外科系の医師であれば基本的に誰でもできます。技量については個人差があるというのが正直なところです。科で言うなら形成外科医が1番縫合が上手だと思いますが、時間外に形成外科医に縫ってもらえることは極めて稀だと思ってください。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。