小説(マンガ化希望)

第6話 少年回復

CT検査を行うと左側頭部に凸レンズ型の高吸収域を認めた。

「急性硬膜外血腫だ。」やまじとしかじが声を揃える。

「頭部外傷の跡があります。ここまで逃げてこられてのはlucid intervalだったのでしょう。」

*lucid interval:急性硬膜下血腫発生後から意識障害が生じるまでの意識清明期のこと。

かくして、開頭血腫除去術が行われた。少年はみるみる回復し会話可能となった。

POD5。「助けていただき本当にありがとうございました。」朝ご飯を食べながら少年が言った。*POD:post operative dayの略で、術後◯日を表す。

「一体何があったの。」とやまじが聞く。

「はい、突然私達の村が襲われて。命からがら逃げてきたんです。あまりに突然で相手の素性はわかりませんが、黒いマントに身を包んでいました。」

「あなたのご両親は?」藤依が聞くと、「どうなったかわかりません」と少年は言った。

「心配でしょう。もう少し回復して元気になったら村まで送ってあげますよ。少々気になることもありますし。」

「先生が行くならお供します。」そばで話を聞いていたみんなが言った。

「では申し訳ないが、診療所をしばらく休診にしましょう。すぐに帰ってこれると思いますが、私の嫌な予感が当たっていれば長期休診になるかもしれません。」

かくして、一行は少年の住んでいた村に向かうことになったのだった。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。