だ、誰だ・・・。やまじが恐る恐る玄関へ近づく。そうっと玄関の戸を開けるとそこには傷だらけの少年が倒れていた。「大丈夫か。」しかじとムールもかけよった。
「ううっ。」少年はだいぶ弱っており話せそうにない。顔面は殴られたような跡があり、意識が朦朧としている。
「一体誰がこんなことを。」3人が少年を診療所のベッドに運ぼうとしているとき、2人の男が近づいてきた。どちらもいかつい体つきをしている。1人はスキンヘッド、1人は金髪のモヒカンでどうしても素行が良い人間には見えない。
「わりーな兄ちゃんたち。そのガキは俺のつれなんだ。こっちに渡してもらおうか。」スキンヘッドが話しかけてきた。
「いや、この子は怪我をしている。事情はよくわからないが、こちらで保護する。」しかじが言った。
「おう、おう、痛い目を見たくなかったら言うこと聞けや。どつくぞこら。」モヒカンが息巻く。
「やるか。」しかじが身構える。一触即発の空気が流れたその時。
「待ちなさい。」後ろからやってきたのは藤依だった。
「私は医者です。その子はこちらで保護します。」
「そんなの関係ねぇー。」モヒカンが藤依に飛びかかる。しかし、その瞬間、モヒカンは後ろへ跳ね飛ばされた。藤依の高速突きが入ったのだ。誰も手刀が見えなかった。
「ぐはっ」モヒカンは一発でのされてしまった。
「くそ、覚えてろよ。」スキンヘッドがモヒカンを抱え、撤退していった。
「先生、ありがとうございました。」しかじがお礼を言う。
「一体この子に何があったのでしょう。」やまじが少年を抱えながら言った。
「それよりこの子、緊急手術が必要になるかもしれません。瞳孔の左右差があります。急いで診療所へ運びましょう。頚椎保護も忘れずに。」一同は診療所へ向かった。