小さい子って何をするかわからないですよね。ほんと、かわいいんですけど。予想外の行動をとってきます。小さなおもちゃやねじなどの部品を食べて飲み込んでしまうのは大半が5歳以下の乳幼児です。本来は大人が気を付けて環境整備しなくてはいけませんが、いつのまにか行動範囲が広がり、安全だと思っていたところに手が届いてしまうこともあります。また、子供でなくても認知症の高齢者や知的障害者がモノを食べてしまうこともあります。というわけで、今回は異物誤飲(いぶつごいん)の話です。
まずは用語を整理しましょう。食べ物でないものが、食道や胃などの消化管へ入ってしまうことを”誤飲(ごいん)”と言います。食べ物だろうとなんだろうと、空気以外のものが気管の方へ入ってしまうことを”誤嚥(ごえん)”と言います。人は呼吸をするときに空気がのどを通ります。途中まで食べ物の通り道と共通なんです。だから飴やビー玉、餅で窒息してしまうことがあります。ヘビは獲物を丸呑みにしますが、空気の通り道と食道は分かれているから窒息しないそうです。
というわけで、誤飲と誤嚥は理解できたでしょうか。今回は誤飲の話です。そして大事なポイントは2つあります。
①誤飲したものが安全か
②誤飲したものがどこに留まっているか
①についてですが、次の3つの条件を満たせば経過観察可能です。1.鋭利でないこと、2.小さくて詰まらせないこと(3-4㎝まで)、3.毒性がないこと。
具体的には小さなプラスチック製のボタン、小さいコイン、消しゴムのかけらなどです。大変ですが、排出が確認されるまで毎日便をチェックしましょう。逆に鋭利なものだったり毒性があるもの(電池など)だったりすると危険です。それは救急車じゃなくて大丈夫ですあ、病院へ連絡を入れて連れて行ってください。場合によっては麻酔下の緊急内視鏡や手術が必要になるのでその地域の中核となる大きな病院が良いと思います。
次に②についてです。誤飲したものが食道に留まっている場合、食道の壁にその物が当たり続けて穴が開くことがあります(穿孔といいます)。そのため食道に留まっている異物は摘出が原則となります。誤飲したものが胃内にある場合、①で述べた3つの条件を満たせば経過観察も可能です。ただ、そのまま流れていくか不安があったり、内視鏡ですぐに取り出せそうな場合は取り出すこともあります。胃から先、小腸まで流れてしまうと手が出せません。肛門まで流れてくるのを待ちます。しかし、途中で腸に穴が開いたり、停留して動かなくなってしまえば手術になります。
ここまでよろしいでしょうか。
①についてはご家庭でも判断がつくかもしれませんが、②はわらかないですね。ですので、異物誤飲に気づいた時は病院を受診してもらうしかありません。救急車である必要は原則ありません。病院には事前に一報してから行くようにしてください。
異物の位置はレントゲンやCTといった画像検査で行います。そして、飲んだものの性状やその時の位置などを考慮して方針を決めます。
受診の時の大事なポイントとして、飲んだものと同じものがあれば持ってくるということがあります。例えば「これと同じおもちゃを食べちゃいました。」とか「これと同じねじを食べちゃいました。」ということになります。磁石で吸い付かせることができるのか、レントゲンではどのように写るのかあるいは写らないのか参考になります。
まとめます。異物誤飲に気が付いたら病院を受診しましょう。救急車でなくてかまいませんが、夜間でも急ぎで受診してください。病院は中規模以上で、消化器内科がある病院が良いです。子供の場合は小児科もそろっている病院が良いです。誤飲したものと同じものがあれば持参してください。