小説(マンガ化希望)

医学の星

20XX年、第三次世界大戦が勃発し今まででは考えられないような数の人間が死んだ。進化したテクノロジーは日々の生活を便利にしたが、人を殺すのも簡単にしてしまった。また、とうとうパンドラの箱である核兵器が使用され大地は荒廃した。人以外の生き物の命もたくさん奪われた。地球上のどこへ行っても生き物の死骸ばかりで、大気は死臭で満ちた。生き残ったわずかな人間もいずれ死ぬだろう。愛する人、家、土地、すべてを失った人は絶望に抱かれて泣くしかなかった。視覚、聴覚、嗅覚、どれもが不快だった。地球は死んだ。

地球上、最後の人間が息を引き取った時、人類は絶滅したと思われた。

だが、人は生きていた。

地球から3万光年離れた銀河にアスクルと名付けられた恒星があった。その恒星を中心に、銀河系が形成されており、地球と酷似する惑星が見つかっていた。各国の緊張が高まる中、第三次世界大戦が不可避と悟った一部の科学者たちはその星に人類を移住させ絶滅を免れようと考えた。まず優秀な先発隊が宇宙船で送られ、その星の環境に問題ないことを確認した。その星の環境は地球のそれと酷似しており、植物と小動物存在が確認された。先発隊からの報告により移住計画は実行に移すことが決められた。計画は当然秘密裏に行われ、国の枠組みを超えた科学者有志のみで進められた。問題は誰を送るかということだった。科学者たちの議論は長引かなかった。

「争うことを知らない、純粋で若い世代が良い。」

知能テスト、体力テストも行い、優秀な若者が世界中からバランスよく集められた。科学者たちにはもう一つ願いがあった。それは移住先の惑星で再び愚かな戦争が繰り返されないことだった。発達しすぎた科学技術が大量殺戮兵器を生み出したことは間違いない。そのため人類の科学技術は一度捨て、持ち込まないことにした。例外として医学に関する知識と技術は人類の平和と繁栄のため持ち込みが認められた。かくして、計画は実行された。その後、科学者たちの予想通り世界大戦が勃発し地球は生命が暮らせない星となった。

新しい惑星に送られた若者たちは無事にたどり着き、第二の地球とも呼べるその星で暮らし始めた。地球とほとんど同じ環境だったこともあり、人類はすぐに順応し再び繫栄し始めていた。科学技術を捨てた人間の暮らしは原始的となったが、平和で充実していた。医学だけが残されたその星は、惑星メディスン、別名医学の星と呼ばれた。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。