浅くて縫った方が良いのか、テープ固定で良いのか迷う場合があります。どのように考えたらよいのでしょうか。
そもそも、なぜ縫合の必要があるのでしょう。それは一度離れてしまった皮膚同士が生着するまでくっついた状態を保持するためです。皮膚組織を寄せてくっつけておけば自然と皮膚同士が元の状態に戻ろうとします。
この、”くっつけた状態を保持する”ことが目的であり、それが達成できれば縫合だろうが、テープ固定だろうがいいわけです。
ポイントがいくつかあります。
1.深さや形状
具体的には皮下組織(脂肪層)が見えていたら縫合です。真皮までならテープでも良いと思います。テープ固定の際もできるだけ皮膚を寄せるようにしましょう。あるいは皮下組織が見えていても、削ぐような創(弁状創)であれば、上からテープで押さえつけるような固定で治癒まで持っていけるかもしれません(もちろん縫っても正解です)。
2.部位
縫合は手間です。縫われる患者さんも大変ですし、抜糸のために通院しなくてはいけません。縫合のメリットは固定性が良いことです。ちょっとやそっとではキズが開きません。創部はどこでしょうか。人は手を使うので指は良く動きますし、ぶつけやすいです。肘や膝は関節を曲げた際に皮膚が伸ばされます。可動部の付近の創は運動や日常生活動作で開きやすいです。テープでは心もとないですね。
3.理解と協力を得られるか
テープ固定で済むならお互いハッピーですが、患者さんは自分のけがや固定の必要性を理解できるでしょうか。つまり、小児や認知症の高齢者ではないですか。小児こそ縫合を避けてあげたいところですが、テープ固定を選んでもすぐにはがしてしまう場合意味がないかもしれません。ガーゼと包帯で覆ってしまうという手もありますが、膿んでいないか、時折親に創部を診てもらう方が良いと思います。固定期間はケースバイケースですが、1週間前後、創癒合するまで固定を続けられるかどうかだと思います。
私は上記3点を考慮して決めています。迷うような時は縫合した方が間違いがありません。創はきちっとくっつけて治した方が瘢痕も残りにくいです。創を一直線にしてあげると洗浄の瘢痕になりますが、少し開くと線が面になります。そうすると面の瘢痕になります。
まとめます。皮膚同士がくっついた状態を保持するという目的が達成できるならどちらもでかまいません。創部の深さや形状、部位、患者の理解と協力を参考に決めましょう。迷うようなら縫合しておいた方が良いです。
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