休日や時間外の救急外来は人手が少なくなります。病院にも休みがあります。一方で、けがや病気には休みという概念がありませんからいつ患者が発生するかわかりません。急患に対して最低限の診療ができるように時間外の救急外来は開かれています。
いつもなら様々な科のスペシャリストがそろった病院でも、時間外の救急外来では医者が1人ということもあります。小さな病院では医者1人、看護師1人です。もう少しそろっていると外科系の先生と内科系の先生がいたります。救命センターだとそれに加えて救急医や産科当直、小児科当直がいたりします。時間外のマンパワーは病院によります。だから、患者の来院が重なるといっぱいいっぱいになってしまいます。医師が1人の場合、なんらかの処置が始まってしまえば、その間外来はストップです。救急外来の待ち時間が長くなってしまうのはこういった要因があります。
日本の医療制度は世界的にも優れていると言われています。国民皆保険、フリーアクセス、医療の現物支給は誇れることです。フリーアクセスというのは国民が自由にいつでも医療機関を受診できるということです。近くのクリニックから大学病院まで好きに受診することができます(大学病院の場合はさすがに近医を案内されると思いますが)。世界には医療機関の受診に制限がかかっている国もあります。
このフリーアクセス、とても素晴らしいのですが、救急外来が込み合う原因となります。いつでも病院にかかれることの裏返しがコンビニ受診なのです。
辛かったり、苦しい時はもちろん医療機関を受診してほしいのですが、知っておいてほしいことがあります。それは夜間や休日の救急外来には自分が診て欲しい専門の先生がいない可能性が高いということです。
例えば、お腹が痛くて救急外来を受診したのに、内科の先生は呼吸器内科かもしれません。耳鳴りがするから病院へ行ったのに、そこにいるのは整形外科の先生かもしれません。いずれも当然専門外です。できる検査も限られているので、緊急性がないと判断されると「時間内にまた来てください」になります。もちろん、緊急性があるかどうかわからないので、お辛い時は医療機関を受診してください。ただ、長く待たされた結果、思っていたような診察を受けられない可能性が高いことも知っておいてください。
医者なんだから、一通り医学は勉強しているはずだという人もいるでしょう。確かに私たちは生理学や解剖学をはじめとする医学全般について学び、各診療科の勉強もしています。実習も医学生の時にしてから現場へでました。しかし、その知識は日々の診療で使わなければ、ブラッシュアップされず過去のものとなっていきます。ざっくばらんに言ってしまうと「あー、それ国家試験の時にやったな」レベルです。
高校の先生に例えてみましょう。高校の先生なら教育学部を出ており、国語算数理科社会など一般的な教科は学習済みのはずです。数学の先生も昔古文や漢文の勉強をしたでしょう。ただ、やはり昔の話なのです。簡単なことは教えられると思いますが、入試問題の解説をしてくれと頼まれたら、それはその教科の先生に聞いてくれというでしょう。
ましてや人の健康や命に関わる話です。「専門の先生に聞いてください」となってしまいます。
専門ではない先生が診察するとはそういうことです。その点ご理解いただければと思います。
一方、医師側の立場としては、専門ではなくても、緊急度や重症度の判断や、時間外でも専門医の診察を要するかどうかの判断はできなくてはいけないと思います。