調理中に包丁で指を切った人、救急外来によく来ます。指はデリケートな感覚を扱うので小さなキズでも結構痛いです。私は痛みに比較的弱いので包丁で指を切ったらストレスで何もする気がなくなってしまうと思います。調理中に限らず、木の剪定作業中だったり、工場で加工を行っているときだったり、指は何かと怪我をしやすいです。
さて、現場でできることと言ったらまず圧迫止血です。病院前の出血に対する対応はとにもかくにも圧迫止血です。患部を心臓より高い位置に挙げ、反対の手で押さえます。ちょうど忍者が印を組むようなポーズになるでしょうか。
さて、救急外来の受診はどうしたらよいでしょうか。ポイントは洗浄や縫合が必要になるかどうかだと思います。例えば紙で指を切ったくらいではキズもたいして汚れていないし皮膚を寄せる必要もないです。その場合は絆創膏で十分ということになります。
まず洗浄についてですが、キズが汚染されているかどうかが大事です。教科書的な基準があるわけではないですが、血が滴る生肉を切っていた包丁とか、屋外でほこりや砂がついた刃物で皮膚を切った場合、これは洗浄した方が良さそうです。水道水で洗浄すれば良いのですが、局所麻酔でもしないと結構きついのではないでしょうか。
次に縫合の要否ですが、切れて離れ離れになった皮膚を寄せる必要があるかどうかが大事です。ぱっくり口を開けているように見えたら縫合した方が良いと思います。特に手指はよく動かすところなので糸で離れてしまった皮膚の縁(創縁といいます)を寄せてあげた方が早く治ります。
皮膚を削ぐようにして切ってしまう場合もあります。削がれた部分が皮膚欠損となるような場合です。その場合は皮膚を寄せてくっつくのを待つというわけにはいかず、お肉(肉芽(にくげ)といいます)が盛り上がってくるのを待つしかありません。皮膚同士がくっつくのを待つよりも治癒に時間がかかります。救急外来では軟膏を塗ってガーゼで被覆してあげます。
まとめます。出血があればまずは圧迫止血をしてください。紙で指を切ったとかよほど小さなキズは受診の必要はありません。汚染があったり、キズがぱっくり口を開けているようだったり、皮膚欠損があったりする場合は救急外来を受診してください。キズの対応に慣れた外科系の先生がいるところが良いと思います。