一般社団法人日本頭痛学会のサイトによると、片頭痛だけでも日本に800万人の患者がいて、発作により毎日60万人の患者が苦痛を感じており、頭痛による生産性の低下で毎年約2880億円の経済損失があるそうです。
恐るべし頭痛。侮れません。
さて、頭痛があった場合の病院受診はどうしたら良いでしょうか。
絶対に病院受診を勧めるのは、「人生最大の頭痛が突然起こった場合」です。
“バットで殴られたような”という表現がされることもあります。救急車を呼んで良いと思います。
100人中100人の救急科医がくも膜下出血を想起するでしょう。
急いで頭部CTを撮影し、出血が確認されれば血圧を下げつつ、脳外科医をコールする必要があります。
あとは、頭痛+意識レベル低下が起こった場合も救急車を呼んでください。脳卒中の可能性があります。
もう1つ注意すべき頭痛があります。それは急性緑内障発作です。これは、眼の内圧(眼圧といいます)が高まってしまう病気です。目玉がパンパンになるイメージです。これが眼痛ではなく頭痛として認識されることがあります。気持ち悪くなってきて嘔吐する人もいます。
頭痛と嘔吐を訴えるので医者も頭の病気を考えてしまいますが、救急領域では有名なピットフォール(落とし穴)です。
眼圧が高まりパンパンになったらどうなるでしょうか。眼に血が通わなそうです。網膜の細胞も圧迫で死んでしまいそうですね。急性緑内障発作を治療しないと失明します。これは眼科の緊急疾患です。
他の頭痛との見分け方は眼の症状です。視力低下、眼の充血があればかなり怪しいです。左右の眼をよく見比べてみましょう。行くべきは眼科です。これは夜中だろうがなんだろうが、すぐ眼科のある病院へ行ってください。夜間に診療している眼科だと地域によっては大学病院くらいしかないかもしれません。
上記以外だと症状次第でしょうか。絶対病院へ行きましょうとか、行かなくていいですとかは言いにくいですね。ケースバイケースになってしまいます。
もちろん、頭痛がひどければ痛み止めをもらいに救急外来に行っても良いと思います。慢性的に頭痛を感じているようないわゆる“頭痛持ち”の人は平日日中に受診しておきましょう。診療科としては一般内科、神経内科、脳外科になります。ただし、脳外科は頭痛の診療をしてくれるとは思いますが、あくまで“外科”です。基本的には“切った貼った”の世界になるので、脳出血や脳腫瘍など外科的に治療するものでないと得意ではないかもしれません。
インターネットで調べると「頭痛外来」を開設している病院やクリニックもあります。慢性的に頭痛に悩まされている人はまずはそういったところへ行ってみましょう。
最後に、印象に残った頭痛患者さんを紹介させてください。20代のカップルが2人そろって頭痛を訴えて救急搬送されました。
2人そろって頭痛?
って思いますよね。どんだけ仲が良いんだと。
偶然2人が同時に病気を発症したのかもしれません。しかし、その可能性は非常に低いでしょう。ましてや健康な20代です。
実はこの日、彼氏がプロポーズすべく山奥にある古風な高級旅館に泊まっていたのでいた。部屋には囲炉裏があり、ロマンチックな雰囲気で炭火を眺めていました。するとだんだん、具合が悪くなってきたのです。
救急医ならピンとくるでしょう。
これ、一酸化炭素中毒でした。
これなら2人同時発症というのも合点がいきますね。なかなか印象深い症例でした。