研修医と一緒に入院患者さんを診療しています。
「今日の採血で血小板が低下しています。」そんな報告を受けました。
「確かにそうだね。原因はなんだろう。鑑別には何をあげる?」
「えーっと・・・。」
多くの研修医がここでどぎまぎしてしまいます。採血結果を見れば、貧血がありますとか、血小板が低下していますとか、腎機能が悪化していますとか上司に報告ができます。しかし、それは数字を見るだけなので誰でもできるのです。中学生でもできます。
私もだめレジでしたから、説教をたれる気はありません。はじめから完璧にできる人はいません。上司より先に患者を診察し、採血結果を確認しただけでも褒めてあげたいと思います。パワハラ、パワハラとうるさい昨今ですが、研修医はやはりそうあるべきです。
ただ、異常値を見つけたら次に原因を考えてほしいのです。キーワードは“なんで”。
なんで、貧血が進むのだろう。
なんで、血小板が下がるのだろう。
なんで腎機能が悪化するのだろう。
すぐに原因はわからないでしょう。患者さんを診察したり話を聞いたり、追加の検査が必要になったりします。その際に必要なのが鑑別です。鑑別を挙げなければ、患者のどこを調べ、何を聞き、何の検査を追加するのかが明確に決まりません。
鑑別がなければなんとなく全身をみて、なんとなく話を聞いて、なんとなく採血やCTを行うというちんぷんかんぷんな医療になります。
「問診なくして鑑別なし、鑑別なくして検査なし、検査なくして診断なし、診断なくして治療なし、治療できねば患者は救えず。」
これの言葉を大事にしたいと思っています。
先日、鑑別を挙げないと診断できないということを痛感したエピソードがあったので紹介させてください。
子どもとスキーに行った時のことです。うちの子は去年スキーのスクールに入れて初級者コースなら降りてこられるようになりました。今年も連れて行ったのですが、すっごく下手になっていました。すぐに転ぶし立つことすら難しいようです。
1年ぶりだから忘れてしまったかなと思いました。
「進む方向にへそを向けるんだよ。」
「エッジを効かせるんだ。」
などとアドバイスしながら早く感覚を取り戻して欲しいと思いましたが全然だめです。
あれー、こんなだったっけ?と思いました。
閉口していると一緒に来ていた義父から、「シューズはきちんと履けている?留めてないんじゃない?」と聞かれました。
「えっ、そんなことある?」と思いましたが、なんとシューズの固定具を外したままだったのです。歩きやすいように最初は固定せずに駐車場から歩いてきたのですが、それを忘れてスキー板を履いていたようです。スキーウェアの上から見えないですし、全く想像していませんでした。
子どもは、「あっ、そうだった。」と・・・。
私は呆然としました。
「そんなことある?」
シューズを固定すると、去年と同じようにスムーズに滑れるようになりました。
スキーを滑れていた子どもがろくに滑れなくなった時、私は感覚が鈍ったのかなくらいにしか考えませんでした。シューズに原因があるという鑑別(可能性)を考えなかったのです。
鑑別を挙げないと診断できないなと思いました。
シューズに問題があるかもしれないと考えれば、足回りをチェックするという行動(検査)に移れたのです。そして、そうだった(rule in)とかそうではなかった(rule out)と言えたのです。
私は私生活でもなにかにつけて鑑別を挙げるクセを付けているのですが、今回は鑑別をあげられませんでした。この反省は次に活かしたいと思います。
以上、鑑別を挙げようという話でした。
*症候に対する鑑別疾患はなんとなくではなく体系的に覚えておく必要があります。体系的にということは枠組み(フレームワーク)を作るということです。おすすめの一冊を紹介しておきます。この本を読むと症候に対してどのように鑑別を整理して挙げていけばよいのかがわかります。貧血の原因を考えるときに大球性、正球性、小球性でグループ分けするように、鑑別疾患をグループごとに整理すると分かりやすいです。ではどのようにしてグループ分けするのか、おなじグループ内の疾患をまたどうやって分けていく(鑑別していく)のか、そこが分かりやすくまとまっていておすすめです。内科の先生は特に必読だと思います。
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