急病

胸が痛い

胸が痛いって結構怖いと思います。「このまま死ぬんじゃないか」って思ってしまいますよね。とっても怖いと思います。

救急車呼ぶかどうか迷うと思いますが、胸痛が出て、「辛い、苦しい、動けない」の時は救急車呼んでいいと思います。

逆にちょっとちくちくするかな程度で周囲に助けてくれる人がいれば、自車で受診でも良いと思います。受診する科はまずは内科になると思います。一番胸痛を見慣れているのは循環器内科(心臓血管内科)ですね。

医療というものは曖昧性や不確実性を含んでいるものです。絶対救急車を呼んでくださいとか、絶対不要ですとかなかなか言えません。このサイトを立ち上げてからその難しさに直面しています。

でもやっぱり言えることは先に書いた

『胸痛が出て、「辛い、苦しい、動けない」の時は救急車』でよいと思います。

今日は胸痛患者を受け入れる際に救急外来の医師が想起する5つの救急疾患を紹介します。Five Killer Chest Painと呼ばれており、我々はこの疾患だけは除外(否定)したいと考えています。

Five Killer Chest Painとは急性大動脈解離、肺血栓塞栓症、急性心筋梗塞、緊張性気胸、食道破裂です。

  • 急性大動脈解離

血管が裂ける病気です。とても痛いです。“裂ける”とはすなわち急性発症です。大動脈はどちらかというと背中側を走っており、「急な背部痛で発症」となります。血管が裂ける位置によって手術が必要かどうか変わります。そのままにしておくと死亡する可能性が高く心臓血管外科がある病院に入院しなければいけません。初期対応では降圧と鎮痛を行いそれ以上に血管が裂けないように管理します。

  • 肺血栓塞栓症

肺の血管に血の塊が詰まってしまう病気です。“詰まる”とはすなわち急性発症です。胸痛を訴える人もいますが、呼吸困難を訴える人もいます。肺の血流が障害されるので、肺で酸素と二酸化炭素の交換がうまくいきません。血の塊は主に足の静脈から流れてきます。俗にエコノミークラス症候群とも言いますが、長時間座ったままの状態でいると静脈に血栓ができやすいです。歩いたり立ったりしたときに血栓が流れ出し肺の血管にたどり着いて発症します。初期対応では酸素投与などしつつ血液をさらさらにする治療を行います。専門科は循環器内科です。

  • 急性心筋梗塞

この中では一番有名かもしれません。心臓の血管に血の塊が詰まってしまう病気です。“詰まる”とはすなわち急性発症です。「胸が締め付けられる感じ」とか「重たいものが乗っている感じ」と表現する人もいます。初期対応では酸素投与、鎮痛などを行います。血管を再開通させなければいけません。循環器内科による緊急カテーテル治療が必要です。

  • 緊張性気胸

心臓や肺が収められているスペースを“胸腔(きょうくう)”といいます。肺が破れて空気が胸腔内に溜まっている状態を気胸と言います。気胸が進展し、胸腔内が漏れた空気でぱんぱんになった状態が緊張性気胸です。“破れる”とはすなわち急性発症です。漏れた多量の空気により心臓や血管も圧迫されるので血圧低下が起こります。初期対応では針を刺して脱気します。脱気してしまえば怖い病気ではありませんが、血圧低下をきたしているときはスピードが求められます。専門科は呼吸器外科です。

  • 食道破裂

食道に穴が空いて唾液や食べたものが食道の周りに漏れ出します。食道は喉から胸を通って胃につながります。胸の中で唾液や食べ物(雑菌がいっぱい)が漏れたら危険です。“破れる”とはすなわち急性発症です。破れる理由は嘔吐や悪性腫瘍などです。理由が不明のケースもあり、その場合は特発性と呼ばれます。条件が整えば手術しないで済むこともあるようですが、一般的には食道外科による手術が必要です。

以上です。上記の疾患は高血圧、糖尿病、喫煙者が多いですから、そういったリスク因子を持っている人はなおさら病院へ行くようにしてください。

ABOUT ME
qqbouzu
地方で救急科医として働いています。