少年の名前はマキといった。マキの案内で村へ行くと建物は崩壊し村は荒れ果てていた。村人たちは黒い装束を身にまとった怪しい男達に強制労働を強いられていた。逃げられないように足かせがつけられている。
「まるで囚人じゃないか」としかじが言った。
「あっ、とうちゃん、かあちゃん。」労働させられている村人たちに両親をみつけ、マキが駆け寄る。
「ご両親か。すぐに見つかって良かった。」とやまじがほっとした次の瞬間、建物の影から大男がぬっと現れマキの前に立ちふさがった。大男と言うにはまだ足りない。その男はまるで巨人だった。マキは驚いてその場に座り込んでしまった。
お男がマキに手を伸ばす。「ぐへへ、子供じゃねぇか。どこから入ってきた。」
「マキ!?マキじゃないか。」両親も気がついてこちらに走ってきた。
「お前たちの子供か。なるほど、1度逃げて戻ってきたんだな。うーん、偉い偉い。だが、逃げたのは重罪だ。お前かお前の両親かいずれか死刑としよう。ぐへへへ。」
「そ、そんな。どうかお助けください。」両親が懇願する。
「だめだ、けじめはつけないとな。ぐへへへ。」大男は見るからに怪力で、その手は簡単に人の頭を握りつぶし、容易く首をねじ切れるだろうと思われた。
「労働力にならねぇからな。ガキをやるか。」男はマキの頭をわしづかみにして簡単に持ち上げる。「このまま握りつぶしてやる。一瞬だぜー。ぐははは。」
「待ちなさい。」いつの間にか藤依が大男の前にいた。
「あーん、誰だお前は。」
「通りすがりの拳法家、いや医者ですよ。その子を離してもらえますか。さもなければ痛い目を見てもらいます。」藤依が穏やかに言った。