小説(マンガ化希望)

第33話 心眼のからくり

からん、からん、からん、からん・・・。今度はもっと大きな音が室内に響く。すると、明らかに甲冑の男の挙動がおかしい。これまで高性能レーダーのようにしかおの動きを捉えていたのに、突然しかおを見失ったようだ。全く相手の位置がわかっていない。

「やはりそうだ。」

しかおを見失い、立ち尽くす男は隙だらけであった。しかおが静かに、そして素早く相手の足元へ潜り込む。そして身をかがめた状態から伸び上がるようなアッパーカットを放つ。

「くらえ、下顎割り!!」

しかおの下顎割りがクリーンヒットした。今度は生身の顔面に入ったのだからひとたまりもない。甲冑の男は一瞬宙に浮いた後、後方に倒れ込んだ。下顎骨折はもちろんのこと、脳震盪も免れない。しばらく起きてこないだろう。

「なぜ・・」

「!!」

「なぜ、気づいた。俺の超聴覚に。」

「タフなやつだ、俺の下顎割りを食らって意識があるとは。はじめから違和感はあったさ。屈強な肉体を持ち、格闘技の技量も申し分ないお前が、甲冑を着ているのだから。強い肉体を持つ者にとって鎧は自らの筋肉であり、甲冑なんてただの重りだからな。なぜ盲目なのに俺の動きが手に取るように分かるのか。それは単純な話で視覚以外の感覚を研ぎ澄ませているからだ。人は視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を用いてしか外界の情報を得られない。人間が取り入れる情報の大半は視覚によるものだが、2番目は聴覚だ。といっても、お前が手強かったからそれに気づけたのはだいぶ後になってからだがな。途中までそのからくりはわからなかった。ピンときたのは本当に最後、お前がトドメの一撃を打ち損じた後だ。あの時俺は甲冑の頭部でけつまづいてしまったが、同時にお前は俺の見失った。それで気づいたんだ。お前が音によって俺を認識しているとな。お前はあえて甲冑を切ることで自然と音を出し、その反響音で敵の動きを把握していたんだ。っと、もう聞いてねぇか。」

甲冑の男は意識を失っていた。塔2階の戦いはしかおが勝利した。

ABOUT ME
qqbouzu
地方で救急科医として働いています。