藤依が階段へ向かうと甲冑の男が阻止しようと襲いかかる。
「解剖学流体術奥義・回転膝窩撃!!」しかおが高速の低空回し蹴りを放った。しかし、動きを察知され、男は飛んで蹴りを躱す。甲冑を着ているとは思えない身軽さだ。ガチャガチャと音がコンクリートの部屋に響く。
「お前の相手は俺だ。」
「いいだろう。お前をとっとと片付けてあやつを追えばよいだけの話。」
「うるせー。片付けられるのはお前の方だ。」しかおは男に向かって距離を詰め、喉元を突くように上段蹴りを放つが、腕でガードされてしまった。すかさず、反撃の打拳がしかおの顔面に向けて迫ってくるが、身をかがめてそれを躱す。しかおはさらに身をかがめた状態からの突き上げアッパーを顎先めがけて放つ。だが、これも振り下ろされた肘打ちで相殺される。互いに拳や蹴りを繰り出すが有効打には至らない。身を引いて重心がのけぞれば踏み込まれて一撃を食らってしまう。息をつかせない近接戦は1分、2分、3分と続いた。息が切れる。
酸欠で意識が朦朧とするが気を抜けば強烈な一撃を食らう。特に棘のついた甲冑の裏拳は一撃必殺の威力がありそうだ。
しかおが一瞬ふらついた。そこに相手の裏拳が飛んでくる。
「くっ。」しかおがなんとか上半身を引いてぎりぎりで躱すが、相手の拳が頬をかする。たまらずバク転で後方へ引いた。
男の追撃はない。相手も追撃する余力までは残っていなかったようだ。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
お互い息があがっている。
薄暗いコンクリートの部屋で呼吸音だけが響いている。両者、相手の動きに注意しつつ息を整える。勝負は長引きそうだ。