「ふっ、やるじゃないか。」
「こいつ、しゃべったぞ。」しかおが驚く。
「当然だ、幽霊じゃあるまいし。お前たちは俺とやる資格があるようだ。ついて来い。」甲冑の男が階段を登り、2階へ歩いていく。男は甲冑を着て動くことに慣れているようだった。がしゃ、がしゃと音を立てながらスムーズに階段を登っていく。
「いきなり殴りかかってきて、何がついて来いだ。卑怯者め。」
「いきなり俺に近づいてきたのはお前だろう。」
しかおが甲冑の男を罵るが全く意に介さないようだ。
「いずれにせよここは進むしかありません。」藤依が促し、甲冑の男についていく。
2階は何もない殺風景な部屋だった。石の壁に四方を囲まれているが、階段や1階の造りとは違った。ブロックが積み重ねられた石造りではなく、コンクリートでベタ塗りされていたのだ。殺風景な部屋がますます殺風景となり、異様な空間を作り出していた。その構造の影響か、この部屋では音がやたらと響く。柏手を打てば、ぱぁーんといい音が響きそうだ。右手後方には階段が見える。
「俺達は上の階に用があるんだ。別にお前に用はないが、どうせ邪魔するんだろ。」
「察しのとおりだ。」
「先生、ここは俺が引き受けます。こいつは俺が倒さないと気が済みません。」
「わかりました。気をつけてください。甲冑を着てのあの動き、只者ではありません。」
「わかっています。」
石の塔、2階の戦いは“しかお対甲冑の男”となった。