「では任せます。」
そういって藤依が階段へ進む。しかじもそれに続く。
「行かせるかー。」
武井が走り、2人へ殴りかかろうとしたその時。
「回転踵骨落とし!」
やまじが回転蹴りを武井へ放った。回転踵骨落としは超前傾姿勢で猛進し手を地面について前転しながら放つ回転蹴りだ。走るスピードに回転のスピードが乗り、無慈悲に振り下ろされる踵は凶器そのものだ。スピードと破壊力を兼ね備えた一撃必殺の解剖拳である。
しかし、武井もやまじへの警戒を怠ってはいなかった。踵が側頭部を直撃するその寸前、やまじの蹴りに反応し、両腕を交差させてガードした。
「なかなかいい蹴りじゃねーか。」
武井は受け止めた蹴りを押し返した。やまじも後転しながら着地し、体制を整える。
「お前の相手は俺だ。本当に俺が弱いか確かめてみろよ。」
「ふっ、思ったよりは遊べるようだ。だが、俺の敵ではない。いいだろう、あいつらを追うのはお前を倒してからだ。まっ、お前の仲間は上の階ですぐに殺されてしまうだろうがな。」
「上の階にもお前の仲間がいるのか。」
「さあな、俺を倒して確かめてみろよ。できればの話だが。」
武井がやまじとの間合いを詰める。一瞬でふところに入ると顔面に向けて一撃を放つ。
やまじはとっさに上半身を引き、すんでのところでかわす。かわしながら腰をかがめ、回転しながら中段の裏拳を放つと武井はこれを飛んで交わした。息をもつかせる攻防が続く。