小説(マンガ化希望)

第12話 虫

森の中を進んでいると徐々に日が昇ってあたりが明るくなってきた。地面はぬかるんでいて、湿度は高い。獣に出会ってもおかしくないが、生き物の気配は全くしなかった。

「思ったより遠いな。」とやまじが言う。実際歩いてみると塔は近いようで遠い。また、3人は誰かにみはられているような奇妙な感じがしていたが、見回しても人影は見当たらなかった。

歩き続けること2時間、精神的にも肉体的にも疲労が溜まってきた。

「そろそろ休憩にしましょう。」藤依が声をかけた。

休憩の言葉に2人ともほっとした。3人は近くの倒木に腰をおろした。

携帯していた滋養丸(じようがん)をそれぞれ口にした。滋養丸とは、丸薬状の形態保存食である。三大栄養素である糖、タンパク質、脂質をベースに構成され、ビタミン剤も付加されている。さらに、滋養強壮、精神安定、疲労回復などに効果がある生薬が配合された高性能食品なのだ。漢方薬メーカーとして有名な“ツマチ”が製造販売している。これを1錠内服すると、三日三晩走り続けることができるとも言われる。

「相変わらず美味しくないな。」しかじがつぶやきながら滋養丸を噛んでいる。

「そうか?おれは好きだけどな。」やまじが言う。

3人が丸薬を食べ終わったころには、全身に力がみなぎっていた。

「さすが、ツマチの滋養丸だぜ。」

疲れも癒えて、再出発しようとしたその時。

「うおっ、なんじゃこいつは?」

やまじが大声をあげた。

「どうした、急に。」しかじがやまじを見る。

「あし、、、、、あしに。変なのが。」

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。