病院の経営悪化が問題となっています。病院と言っても色々あるようですが、皆さんに関係が深いのは一般病院です。病気やケガで受診し、入院設備も整った病院です。
一般じゃない病院があるの?と私も思いましたが、厚労省のサイトを見ると病院も色々な分類があるようです(https://www.mhlw.go.jp/www1/toukei/isc/yougo.html)。
具体的には結核のための病院とか特殊な感染症のための病院とか、精神病院といったものが一般病院とは分けられているようですね。
これらをひっくるめて、約7割の病院が赤字だそうです(https://www.ntv.co.jp/zero/kikikomi/articles/flj9r2w8owxw85lm.html)。医療って社会インフラだとおもうんですけど、それが7割赤字ってすごく問題だと思います。社会インフラには安定して持続可能であることが求められますが、これ、持続可能なんでしょうか。
公立病院に限定すると約8割が赤字だそうです(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC068RS0W5A101C2000000/)。
さらに、大規模急性期病院ではなんと9割が赤字だそうです。(https://gemmed.ghc-j.com/?p=68625)
えっ、そんなことある?とも思いますが、本当のようです。
背景には物価高騰、人件費増加などがあります。医療は社会インフラですから、政治介入してもらう必要があると思います。具体的には診療報酬の改定(医療の値段は国が決めています)、補助金です。補助金は垂れ流しも困るので病院の経営努力が前提ですが。
私は勤務医なので、病院の収益とかはあまり考えずに臨床をしています。お金のことは事務方で考えてもらって、自分は臨床に専念したいからです。多くの勤務医がそうだと思います。しかし、上記の事態をみて、お金のことも考えないといけないよなぁと思い始めてきました。
実際、臨床をしていて、「病院収益」について「むむむっ」と思うことがいくつかありました。今日はそのエピソードを紹介します。
エピソード1 「退院日を主治医が決められない問題。」
とある救命センターの医師から聞いた話です。その病院では退院日を主治医が決められないと言います。
なぜか、、、、、、、。
それは、病院が病床稼働率をコントロールしたいからです。例えば、主治医が退院許可を出して、週末家族とすごしたいだろうから金曜日に退院と決めたとしましょう。そして病院はその時空床が目立つ状況だったとしましょう。病床が稼働していなければお金は入ってきません。特に週末は上記のような主治医のはからいや患者意向でベッドが空きがちです。そこで病院は患者を退院させず入院を伸ばすのです。「先生、週末結構ベッド空いているから土曜日か日曜日退院にして。」と。
先程の救命センターでは、主治医は退院許可のみ出して、退院日はその病棟の看護師長が決めるという仕組みになっているそうです。病床の空きと入院予定、退院予定を勘定して看護師が退院日を調整します。
あとは急性期充実体制加算というものがあります。これは急性期医療体制が整っている病院につく加算で、病院の収益となります。国は急性期病院とリハビリや慢性期の病院で役割分担をさせたいので、急性期病院の入院期間を短くしようとしています。急性期充実体制加算は入院日数が1~7日以内、8日~11日以内、12日~14日以内というふうに分けられていて、徐々に加算が減っていきます。つまりもらえるお金が減っていきます。そのため、病棟の師長から、「この患者さんはまだ高い方の加算が採れるから入院してもらっていていい」という発言がありうるわけです。
私はこの対応に違和感を強く感じました。家族と仲が悪いとか、身寄りがないとかは別として、患者さんは早く退院したいはずです。医学的には退院できるのになんだかんだ理由をつけて入院を伸ばすのは患者さんの不利益です。家で過ごせる時間を奪うことになりますし、患者さんの支払いも確実に増えます。それはやりすぎだろうと思います。主治医が良いって言っているのに病院の収益の都合で患者さんが帰れないってどういうことやねんと思います。
と思っていたら、現在私が働いている職場でも同じお触れが出ました。これには違和感を覚える医師や看護師もいます。
「お金がなければ皆さんのやりたい医療ができません。」と会議で言われました。そうかもしれんけど、、、、なぁ。
エピソード2 「経過観察入院推奨」
病院は当直医がいないといけないですが、働き方改革で人員のやりくりが大変になっています。小規模から中規模病院では一部の当直をアルバイト(非常勤医師)にお願いするケースもあります。病院ごとに少しずつルールとかやり方が違うので当直室には当直マニュアルが置いてあることも珍しくありません。
ある病院でこんな文を目にしました。
「熱中症や急性アルコール中毒、脱水などの患者さんは基本的に経過観察入院としてください。」
これはどういう意味でしょうか。
軽症と思って帰宅させたら帰ってから具合が悪くなることがあるから安全のために一泊させてくださいという意味なのか。非常勤医師だと入院させることに遠慮があるだろうから(入院させておいて自分ではその後みないため)、遠慮しないでねという意味なのか。
確認していないので真相は不明です。
ただ、原則は診療した医師が入院が妥当と判断すれば入院だし、帰宅が妥当と判断すれば帰宅です。これが原則です。熱中症だって程度次第ですし、急性アルコール中毒も脱水症も同様です。外来で点滴してよくなっちゃえば帰宅で良いわけです。
もしかして、緊急入院を取って収益を少しでも挙げたいのではと邪推してしまいました。
病院赤字のニュースをみるにつけ、そんなことが頭をよぎるのです。
エピソード3 「この人毎日通ってるなぁ」
とある病院で外来のお手伝いをしています。救急患者も見ますが、再診の患者さんもみています。再診はほとんどがキズのフォローアップで、擦り傷だったり、縫合した切り傷だったりします。
キズは感染してほしくないので基本的には1日1回ガーゼ交換して創部を清潔に保ちます。ガーゼを取って軽く水道水ですすいで、水気を拭き取って、傷薬を塗って、またガーゼ等で保護しておく。これを外来でやるわけですが、高度な技術は不要です。そのため、患者指導をして自分でやってもらったりします。患者も通院しなくていいですし、我々も忙しいので再診を減らしたほうがメリットがあります。待たされるし、お金かかるし、感染症にかかるかもしれないし、病院なんていかないに越したことはないのです。
ところが、この病院の外来は毎日再診が入っています。患者さんは擦り傷や切り傷の処置のため毎日通っているのです。挨拶してガーゼを取って、消毒ちょんちょんしてまたガーゼ。
これ、毎日来る必要あるかなと思います。
これも、私の邪推が働いてしまいます。
収益のため?
もちろん、別の理由があるかもしれません。高齢者だから自分で処置は難しいだろうという配慮ともとれます。高齢者は病院が好きな人が多いですから(ひとり暮らしで仕事もしていないと病院に来たほうが人と話せて安心なのでしょう)、患者満足度高いかもしれません。
私はお金のことは詳しくないのですが、ガーゼ代や人件費と再診料や処置料を天秤にかけるとどうなんでしょうか。逆に赤字になる可能性もあると思います。医療会計に詳しい人がいたら教えてほしいです。
「これ、毎日通わなくてもいいよな。」と思いつつ、常勤の先生(もしくは病院として)の意図が分からないので、連日通っている人はまた明日の予約を取って帰ってもらいます。
話が長くなりました。病院赤字のニュースを見て、思ったことをつらつら書きました。どこの病院も赤字にならないように必死みたいです。