けが

犬・猫に噛まれた

動物に噛まれたキズは感染のリスクが高いため時間外であっても病院に行くことをおすすめします。擦り傷程度でなおかつ十分水道水で洗浄できたのなら病院へ行ってももうやることはないかもしれませんが、1度みてもらった方が無難でしょう。

救急外来で多いのはやはり犬や猫によるキズです。医学では噛まれてできたキズを咬創といいます。地域によっては馬咬創があったり、熊咬創があったりします。

動物の口の中は雑菌がはびこっています。非常に汚いです。キズの対応に加えて感染対策が必要です。感染対策と言っても話はシンプルで、傷口を入念に洗浄します。

一に洗浄、二に洗浄、三四がなくて、五に洗浄。

診察した医師が、「もういいだろう」と思うまで洗浄します。何Lの水で洗浄するという決まりはなく、ある意味で診察した医師が納得するまで洗浄します。

病院に来る前、自宅でできることは圧迫止血くらいでしょうか。もちろん洗浄してもらっても悪くはないのですが、よほど我慢強い人でなければ痛くてできません。病院に行けば局所麻酔をしてから洗浄できます。病院に行くのであれば、無理に自宅で洗浄しなくても良いと思います。

病院では局所麻酔をして洗浄が終わったら創部の評価を行います。すなわち、血管や腱の損傷はないかチェックします。あれば縛って止めたり(結紮(けっさつ))、後日整形外科へ紹介したりします。

その後、傷口をどうするかはケースバイケースです。

基本的には感染のリスクが高いため縫合して閉創することに慎重にならねばなりません。傷口を閉じると閉鎖空間で細菌が繁殖するためです。

受傷部位や時間経過、汚染の程度、基礎疾患などを考慮して決めます。あえてキズを縫わないでおく場合もあります。医師が大丈夫だと判断すれば閉創することもあります。その際、完全な閉鎖空間を作らないためにあえて粗く縫合したりします。

破傷風トキソイドという破傷風菌感染を予防する筋肉注射もします。破傷風はなってしまうと大変なので必ず予防しましょう。

処置の後は鎮痛薬と抗生物質がたいてい処方されます。感染していないかのチェックために近々再診の予定をいれて帰宅です。

感染を起こした場合、塗った傷口を再度開いたり、切開排膿が必要になったりする場合があります。どうやって感染に気づくかと言うと、創部の腫れ、発赤具合、熱感、痛みの増悪、膿のような滲出物の出現がサインとなります。まとめて感染兆候といいます。ご自身でもこれらの兆候に気をつけていただき、変だと思ったら再診日を早めてもらってください。

ちなみに、犬よりも猫の方が感染のリスクが高いです。牙が犬よりも細くて長く、咬創が深くなりやすいためです。

それと、犬に噛まれた時は狂犬病が心配ですよね。日本では1956年以降狂犬病の発症がありません。世界的にも珍しく狂犬病を克服した国です。したがって日本国内で犬に噛まれても狂犬病の心配はありません。海外、特に東南アジアなどの狂犬病流行国で動物に噛まれた場合は感染のリスクが高いです。

話をまとめます。

動物に噛まれた場合は医療機関を受診しましょう。時間外でもかまいません。

局所麻酔をしてもらってから入念に傷口を洗ってもらい、よく観察してもらいましょう。

余談ですが、ヒト咬傷もまれにみます。噛みつかれたというケースもありますが、若年成人だと喧嘩をして相手の顔面を殴ったときに拳を相手の前歯で負傷したというケースが多いです。Fight bitesと呼ばれ、深部まで感染が及ぶことがあります。ヒトを殴ったとは言いづらいと思いますが、相手の歯で手をけがした時は医師に伝えましょう。

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qqbouzu
地方で救急科医として働いています。