雑記(医療関連)

医師と歯科医師

なんでも屋の救急医でも苦手なものがいくつかあります。そのうちの1つが歯です。外傷診療は得意です。顔面外傷はよく遭遇します。

でも、「歯がかけちゃいました。」とか、「抜けちゃいました。」と言われると困ってしまいます。

「歯かぁ。それは歯医者さんに診てもらうしかないな、、、、。」

そもそも歯科医業は歯科医の独占業務で医師は手が出せないのです。

医師と歯科医師の業務の違い、歯科口腔外科医の立ち位置など恥ずかしながら私は無知でした。今回調べたのでまとめてみます。

まず医師と歯科医師の違いについて書きます。根本的に違うのですが、まず医師になるには医学部医学科を卒業する必要があります。そして歯科医師になるには歯学部を卒業する必要があります。医師は消化器系、神経系、筋骨格系、内分泌系など全身について学びますが、歯科医師は歯や歯肉など口周りのことを重点的に学びます。

じゃあ、カバー範囲の広い医師の方が上位かというとそうではありません。そこは職業、専門性が違うのですから単純比較はできません。

例えば、国語算数理科社会がまんべんなく教えられるオールラウンドの先生と、日本史しか教えられないけど、ひたすら歴史研究をしてきたので本が一冊かけるくらいの先生どちらがすごいのかってことです。

日本史において前者は後者に対して歯が立ちません。一方、後者は専門を外れた途端無力です。得意領域、専門性が違うのです。

話を元に戻します。医師は全身を学ぶので口腔のことについてもある程度知っています。では医師は虫歯(う歯)の治療をしてよいのでしょうか。

答えは“よい”です。以下にまとめます。

医師にも歯科医師にもできること

→抜歯、う歯治療、歯肉疾患の治療、歯髄炎の治療。全身麻酔。

医師ができて、歯科医師にできないこと

→歯科口腔領域外の医行為。膿の切開排膿、骨の整復、手足の縫合など。

歯科医師ができて、医師ができないこと

→歯の補填、補綴、矯正

私は抜歯なんて怖くてできません。免許的には許されていると知って驚きました。まぁ、免許的に許されていても実際にやる医師はいないでしょうね。

また、歯科医が全身麻酔をかけることができるのも意外でした。歯医者さんのイメージからすると考えにくいですよね。麻酔は医学科を卒業した麻酔科医がやるイメージです。これは医師にしか許されていない医業に歯科医師が踏み込んだことにならないのでしょうか。答えは、条件付きだが歯科医師が全身麻酔をかけることは可能、です。

これはう歯治療や抜歯のために全身麻酔をかけることは歯科医業の範疇である、という理屈なんですね。不思議ですが、同じ麻酔でも歯科治療のためなら歯科医師が麻酔をかける、身体治療(胃癌の手術など)のためなら麻酔科医が麻酔をかけるということです。見方によっては麻酔科医も歯科処置ではないという”条件付き”で全身麻酔をかけているとも言えます。

色々調べていたら“歯科麻酔”というジャンルがあるんですね。歯科医が研修を受けて認定医や専門医を取得するようです。

疑問ですが、例えば多発外傷で、顔面骨、歯牙に関する手術と下肢の骨折の手術を同時にやるとなったらいったい誰が麻酔をかけるのでしょう。医業と歯科医業は独立しており、それぞれ独占業務です。相手の領分に手出しはできません。

前に麻酔科医不足を麻酔の研修を積んだ歯科医で補ってはどうかという意見が出たようです。この時麻酔科学会が、「麻酔研修受けた歯科医と俺達麻酔科医はぜんぜん違う。一緒にすんな。」と猛反発したことがありました。

https://anesth.or.jp/files/pdf/suggestion20081106.pdf

なんだか溝が深そうですね。

歯科医と歯科口腔外科医はどうちがうのでしょうか。

まず、歯科口腔外科とは顎関節症、親知らずの抜歯、口腔癌、外傷など口の中や顎・顔面の外科的治療を専門とする分野です。歯列矯正や、歯垢除去、ブラッシング指導などを行う一般歯科に対して、こちらは切った貼ったが中心の外科領域となります。基本的には歯科の範疇になりますが、医師が歯科口腔外科へ進むコースもあります。

私はこれまで顔面骨骨折なら形成外科にコンサルトすることが多かったです。顎骨骨折単体ということは少なく、上顎骨骨折も他の骨折とまとめて形成外科にお願いすることが多かったように思います。

形成外科の先生も顔面骨についてお詳しいので治療を引き受けてくれます。

ところが、知り合いの歯科口腔外科の先生にこんなことを言われたことがあります。

「顎骨骨折の場合は俺達にも声をかけて欲しいんだ。形成外科の先生にお世話になっているけども咬み合わせのことまで考えて治療できるのはうちらだから。」

私は反省しました。これまで咬み合わせのことまで考えていなかったからです。確かにそうだなと思いました。話を聞くと、以前、歯科口腔外科なしに形成外科で顎骨の手術をして、整容的に問題がなかったものの咬合的に問題が出たケースがあったとのこと。歯科口腔外科としてはそういったことがないように積極的に関わっていきたいとのことでした。

咬み合わせとは、医科出身の私にはあまりなかった視点でした。

顔面は見た目の問題も出やすいですし、視覚、聴覚、嗅覚、味覚など感覚器が集まり非常にデリケートなところです。診療科のオーバーラップもしやすいため、垣根を低くして協力し合うことが必要です。

医師と歯科医師は全然違いますが、調べていたら以外な共通点もあって面白かったです。

最初は歯が欠けた時の初期対応について書こうと思っていたのですが、気づいたら話が完全に逸れてしまいました。初期対応の話はまた別の機会に書こうと思います。

ABOUT ME
qqbouzu
地方で救急科医として働いています。